見ず知らずの(たぶん)乙女ゲームに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
常羽すな子
プロローグ
みなさま、ごきげんよう。
ルクレツィア・ガラッシアと申します。
栄えあるステラフィッサ王国筆頭貴族、ガラッシア公爵家の愛娘で、先月八歳になったばかりですの。
プラチナブロンドの髪に白磁の肌、薔薇色の頬とサファイアの瞳、自分から申し上げるのも気恥ずかしく思いますが、周りからは天使か妖精のように愛らしい美少女ともてはやされておりますわ。
さて、そんなわたくしですけれど、ただ今王城の庭園の一角にて、同じ年頃のご令嬢、ご令息に囲まれながら、チベットスナギツネのような顔をしております。
そう、チベットスナギツネ。
あらご存知ありません?
……ええ、そうですわね。
おそらくここにいる誰も、いまのわたくしの顔をそんな形容で喩えたりしませんわね。
ここには、この世界には、そんな名前の動物も、チベットなんていう地名も存在しないのですもの!
下は七歳から上は十二歳までの高位貴族の子供たちが集められている本日のお茶会は、ステラフィッサ国王妃様主催で、今年わたくしと同じく八歳になられる第一王子のエンディミオン殿下の友人、引いては未来の側近候補、そして婚約者候補を募る、という名目です。
……が、そんなものは建前ですわね。
そもそもわたくしの二つ上の兄で公爵家嫡男のアンジェロはすでに遊び相手として三年ほど前からエンディミオン殿下のおそばに侍っておりましたし、婚約者候補だって、家柄や政治的な見地から言ってわたくしを差し置いて相応しいと思えるご令嬢が見当たらない現状、もうほとんど出来レースのような会ですわ。
わたくしは本日、エンディミオン殿下の婚約者にさせられるべくはじめてお顔を合わせることになりましたけれど、わたくし本当に、少しだけ期待をしておりましたのよ。
これが思い出せる最後のきっかけになるのではないかしらと、本当に本当に、藁にもすがる思いだったかもしれません。
それなのに、それなのに。
わたくしの頭に浮かぶのは、いまの気持ちをよく表しているようなチベットスナギツネのあのスンとしたお顔だけ。
エンディミオン様、あなたいったい、
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