とある戦闘民族の王子に捧ぐ

維 黎

失礼、噛みました

 少し離れたゴツゴツとした肌色の岩場に隠れるように退避して様子を伺うイチコロとイモリン。


「だ、大丈夫なのか、フィシューのやつ。このままじゃ下ろされちまうぞ?」

「あ、あいつは……あいつは初めてオカマの為に戦おうとしているんだ! 自分の命をかけてなッ!!」

「そ、そんなッ!」


 未曾有の危機に瀕した世界チーキウ。

 悪の魔導師ナーニ・オユウによって封印が解かれた魔人ドォ。

 その魔人ドォによって人類の大半が殺されてしまった。

 恐るべき魔人ドォ。

 ちなみに『ドォ』の発音は本吉工業のお笑い芸人"上村ジョーシ"の無形文化財認定のギャグ『ドォーン』の『ドォ』の発音と同じである。


 パニック星人のイチコロとチーキウ人のイモリンが見つめる先では、カナサ人であるフィシューが、魔力を極限に高めた状態で魔人ドォと対峙していた。


「魔人ドォ! 貴様を倒す方法は一つだけ。それはバラバラに吹っ飛ばすことだッ! この俺の全魔力を使ってお前を倒す! ハアァァァァァァァ!」

 

 自分の魔力総量以上に魔力を高めるフィシュー。そんな不可能を可能としているのは魔力だけでなく自らの命も一緒に使っているからだ。


「見せてやる魔人ドォ。俺の最後の爆裂魔法はなびをな。――みんな。さらだばー、あ、ちがっ! さらばだッ!」


魔力自爆着火術チャッカマン


 術が発動した瞬間、フィシューは木っ端みじんに爆散する。


「あ、あぁぁぁ。ど、どうしよう、イチコロ! 俺、ブラジャさんになんて云えばいいんだッ!」


 イモリンの慟哭にしばらく沈黙し答えを探すイチコロ。

 そして――。


「へッ、汚ねぇ花火だ――と」

「それは云っちゃダメでしょ」



――了――










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