5話 入学式5
「姉貴と話していたら教室ついちゃいました。姉貴、僕がいなくて平気ですか?」
「大丈夫」
「もう高校生になったんですし、杞憂でしたね。新しい友達出来るといいですね! 特に女の子の」
「えぇ。幻夢こそ私が隣にいないからって泣かないように」
「そんなこといわれたら抑えてた涙が……。でも、休み時間は姉貴と過ごしますし。ま、まさかクラスが離れたことで一切関わらないとかっていうのは無しですよ?」
「幻夢、心配しすぎよ。そんなことあるわけないでしょ? それよりも早く行きなさい。遅れるわよ」
「はい!」
「……」
幻夢に一つ、嘘をついた。
私……強がってた。
教室のドアを開け、中に入る。すでにクラスの半分は揃っていて新しく友達になった人同士、同じ中学校だった人たちと雑談に華を咲かせている。
気のせいだろうか。注目されてる?
私は黒板に貼ってあった番号と名前を見て席に座る。窓側の1番後ろから二番目。なかなかいい席だ。1人でも大丈夫だと言ったのは今からでも撤回したい。
入学式は今日だというのに仲のいいグループは私の知らない間にどんどんとできていく。これが陽キャと陰キャの違い? このままじゃ私、教室でボッチなんじゃない?
中学の頃と同じ。そしたら、また闇姫に逆戻り。……駄目。1度ネガティブなことを考えると、どんどん悪い方向にいく。平気、大丈夫。入学式なんだから、緊張してるのは私だけじゃない。
自分から声かけてみるべき、か? でも、どう話しかけていいかわからない。舎弟は男ばかりだったから……。中学時代は女の子とどう会話してたっけ? なんて、必死に思い出そうとするも頭の中はすでにパンク寸前。
「ねぇ、さっきさ校門付近で白衣姿の先生に声かけられてた人だよね?」
「え?」
「あ、やっぱりそうだ!」
「?」
なんでわかったんだろう?
「あなたの目って赤いから目立ってたんだよね。白衣姿の先生とさー、なに話してたの?」
「え……」
なに? あの先生ってそんなに有名なの?
「新任で名前はわかんないんだけど、イケメンな先生が新入生に声かけてるーってウワサになってたんだよ」
ウワサされるほど大した話はしてない。でも、もうウワサになってるのか。噂って怖い。そう感じたのは久しぶりだ。
「他の生徒がナンパしてもイケメン先生はガン無視しててー。だけど、あなたには自分から声かけにいってて。って、聞いてる?」
「う、うん」
あの先生が無視? 私には普通に話しかけてたけど。
……どうしよう。とても可愛い女の子なんだけど、ここまでグイグイ来られるのは少し苦手かも。話しかけるタイミングが掴めない。
「あ、もしかして緊張してる? ごめんね、いきなり色々聞いちゃって」
「ううん、大丈夫」
「赤い目の人間って珍しいからさ、ちょっとした話題になってんの。でもアタシはそんなの気にしないから。あなたが嫌じゃないならアタシと友達にならない?」
「友、達……」
こんな数分しか会話してないのに友人になっていいの? そんな軽いノリで友達ってなるものだっけ?
「駄目かなぁ? こんな可愛い子と友達になれたらアタシ自身もうれしーし。だってさ、美少女って隣にいるだけで目の保養じゃん」
「美少女? 誰が?」
「え!? あなたって自分自身が美少女って自覚ない系のひと?」
自覚ない系?
「もったいないなぁ、こんなに可愛いのに。あ、アタシは
「私は
「
「お、お金持ちじゃない。普通の家庭よ」
「なんだぁ。普通の家庭か~、安心した」
話し方が変わってる子だな。風夏ちゃんって。なんだろう、今どきの女の子ってこんな感じなのかな?
私が裏社会にばかり目を向けていたから、表の世界がこんなに明るいなんて気づかなかった。
中学3年生になると同時に闇姫を卒業した私。高校受験の年だったから友達作りをする前に中学を卒業してしまって、女の子の友達はほぼ0。それまでは学校にもほとんど行かず、幻夢たちと裏社会に身を潜めてたから。
「あ、この子はアタシと同中で親友なんだ。初対面の人には人見知りなとこがあるけど、見た目はめっちゃ可愛いし性格は天使すぎるくらい優しい子なんだ」
「は、初めまして。
「苗字だと呼びにくいだろうから下の名前で好きに呼んで」
このクラスの女の子、顔面偏差値高すぎない? 私が偏差値の平均を大きく下げてる気がする……。
「じゃあ、や、闇華ちゃん?」
「えぇ、それで構わない。でも、なんで彼女の後ろに隠れてるの?」
「あ、ごめんね、炎帝ちゃん。この子さ、さっきも言ったとおり人見知りで。アタシ以外には目を合わせるのも苦手なんだよねぇ。でも可愛いしょ?」
「女の子らしくて可愛いと思う」
「炎帝ちゃん超ウケる。そーいう炎帝ちゃんも女子でしょ?」
「そうだけど……」
私、変だった?
「アタシら今からダチね! 改めてよろしく、炎帝ちゃん」
「桐谷さんと同じように神崎さんも私のことは名前で呼んで」
「わかった。闇華ね! じゃあさ、闇華もアタシのことは気軽に風夏って呼んでよ。神崎さんなんて堅苦しいのはナシでさ」
「わ、わかった。風夏ちゃん」
風夏ちゃんは肩につくくらいの茶髪。染めているのに全く荒れてないのはちゃんとケアをしてるからだろうか。目が合えば太陽みたいに明るい笑顔を見せてくれる。
こうして私に二人の友人ができた。しかも、どちらもとても可愛い。きっと性格もいいんだろうな。
教室に入った時はガチガチに緊張して、友達できるのかな? って不安だったけど、今はそれが安心に変わった。これからの高校生活は楽しくなりそう。
☆ ☆ ☆
教室での自己紹介も一通り済んで、今日の学校は終わった。明日からは授業が始まる。
「あね~き、じゃなかった。……炎帝さんいます?」
「炎帝っていうと…」
「赤い瞳が特徴的の女の子です」
「あ、あの子ね。呼んでくるから待っててくれる?」
「はい!」
「炎帝さん。あっちで男子が呼んでるけど」
「え?」
ブンブンと激しく手を振ってる。幻夢、そこまでしなくても気づいてるから。
「闇華、あの男子ってカレシ?」
「闇華ちゃん、モテるんだね」
「……どっちも違うから。風夏ちゃん、夢愛ちゃん、また明日ね」
「またねっー! 闇華!」
「闇華ちゃん、バイバイ」
私は急いで帰る準備をしてスクール鞄を肩にかけ教室を出た。
「……幻夢」
「お、怒ってますか?」
廊下を歩きながら幻夢に話しかける。どうして私が名前を呼ぶだけでそんなにビクビクしてるの? 私って、いつも怒ってるイメージ?
「怒ってないわ。ただ彼氏と勘違いされただけ」
「すみませんでした……。僕が姉貴の恋人なんて恐れ多すぎます」
「普段からスキンシップしてる貴方から出る言葉とは思えないわね」
「ハグは別物ですよ! あれは姉貴分を補給してるだけですから。姉貴に触れば元気になって明日も頑張ろうって気になるんです」
「そういうものなの?」
「そういうものなんです」
私に触れただけで元気になるって、私は魔法使いかなにかなの? よくわからないけれど幻夢がそれで頑張れるのなら問題はない、か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます