ーー何だ!  何かあるのか?  何か私に対して何か思惑が・・・?ーー

  私は猜疑心に満ちた。

「しかし、妊娠していたからと言って、犯人が男性と絞るのは危険ではないですか?」

「勿論、女性も調べたのじゃが・・・結果は芳しくなかった」 私は、そんな事件がここで起こったのかと、はじめて聞いた。そして私は、頭が少し痛くなり両手で頭を抱えた。そして自分の病気の事を諏訪さんに話した。

「実は、私は現在解離性健忘に悩んでいるのです。過去の一部分が思い出せないのです。稀にキーポイントとなる言葉や現象が頭の中で響くのですが、一つの形とならないため、思い出すことができません。そしてその時頭が痛くなるのです。 現在病院の神経科に通っていますがあまりおもわしくありません」 諏訪さんは、

「そうなんですか、貴方も大変じゃのう、早く良くなると良いがな」と言った。

「有り難うございます」 私は礼を言った。そうして話している間に西陽は大きく 傾いてきた、サッカーをしていた子供たちも三々五々に帰っていた。風も冷たく感じるようになっていて、赤い夕日にあかね雲を背景に鳥が飛び交う姿が目に写り、とても美しい景色を醸し出していた。諏訪さんと別れ、家 に帰ろうとした。

「新吾!  お家に帰るよ。お母さんも心配するからね」 と大きな声で新吾を呼び戻し、諏訪さんに挨拶をして、土手のうえの道に上った。

「そうじゃ、儂も帰るとしよう」 諏訪さんも一緒に階段を上った。三人で川上に向か って歩き、住宅街に向かう坂道に来た。ここで道は二つに別れていた。私と新吾は、その坂道を下って行ったが、諏訪さんは、

「儂の家はもう少し川上にあるので・・・」 と言って、諏訪さんは、道路を歩き続けた。

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