リメンバー!

淡雪 隆

Ⅰ リメンバー!


           淡雪 隆

 

 

 〈私の頭の中で、そう、脳の中で、ガラス細工の珠が、暗闇の中で落下をして、床に落ちて砕けて弾けた。頭痛が激しくする。・・・?〉

 

     ※  ※  ※  ※

 

  初秋の吹く風も頬に心地よい、川沿いの道路上で西に傾こうとする太陽の 日差しを浴びながら、長男と二人で散歩をしていた。私は設楽弘一したらこういち三十五歳、M商事会社の営業係長をしている。毎日仕事に忙殺され、やっと貰えた休日だった。一体いつ以来だろう。私は黒いトレーラーに茶色のコットンパンツを履いていたのだが、新吾はまだ五歳だ。半ズボンの上に胸にミッキーのアップリケの着いた青色のシャツを着ている。可愛い盛りでとてもやんちゃだ。道路で拾った細い竹の棒で道そばに群生し ている、セイタカアワダチソウをなぎ倒している。セイタカアワダチソウの花粉がパッと撒き散らされ、風に乗って運ばれていく。ふと、気が付くと赤トンボが翔んでいた。

 ーーもうそんな季節になったのか・・・ーー

 道のそばには、川原に続く土手があった。川の流れにそって、河川敷に小さな広場がある。そこで小学生だろうか、みんなでサッカーをしていた。子供たちは元気よく一つのボールを追いかけていた。私と新吾は、近くにあった階段を下り、河川敷に降り ていった。草むらに放り出された、ランドセルやバッグ等が散らかっているその横に、雨ざらしの為に黒く変色したベンチがあった。腰掛けようと思ったが、あまりにも汚いので、持っていたハンカチを二枚広げ新吾と二人で座り込み、子供たちの サッカーを眺めていた。新吾は、身体を左右に揺らし、一緒に遊びたい様子だったが、五歳ではまだ仲間に入れてもらえないだろう。元気に仲良く遊んでいる子供たちを見ると、私は心が和んだ。微笑ましい気持ちよさだ。 まだ小学生だ、 〈キャー! キヤーッ! キャー!〉 と、絹を切り裂くような高い声が、川原に響いた。そんなとこに、お爺さんが何処からともなく現れた。

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