6月(その2)

   

 獣医さんの指導で変わった二番目は、ケージ周りの状況だ。

 飼育ケージのドアを開けっ放しにするのは良くない、と言われたのだ。

 ケージに入れておく時は入れておく、出す時は出す。そのメリハリをつける必要があるらしい。ケージの扉を常時開放して自由に動けるようにしておくと「縄張り意識が広い犬になって、番犬みたいになってしまう」と説明された。


 正直「縄張り意識」とか「番犬みたいに」とか、その辺りの理屈はよくわからなかったが……。

 ケージの扉を閉めておく方が良いのであれば、それはそれで飼う方も楽だ。

 それまでトイレ用トレーはケージの外に置いていたが、普通にベッドと一緒にケージの中に入れて、扉も閉めて……。ただし蓋だけは、ぴょんぴょんジャンプする癖があるので犬が頭をぶつけないよう、常に開けておくことにした。「何もないと退屈するだろう」と考えて、犬用おもちゃをひとつかふたつ入れておく時もあった。


 なお蓋に関しては、この時「いずれ大きくなったら飛び出してしまうのでは?」という心配もあったが、後々成長すると共に、犬自身が跳躍を控えめにするようになっていった。たとえ飛び出せるとしても「あんな高いところから飛び出したら落ちて怪我をするからダメ」というのは自然に理解できたらしい。


 今まで玄関全部が犬のエリアだった頃は、トイレ用トレーを無視して玄関中でウンチやオシッコをしていたが、ケージに入れるようになったらきちんとトレーを使うようになった。

 ケージの中だけならば半分はベッド、残り半分はトイレ用トレーという環境だから、さすがに自分の寝床は汚したくなかったのだろうか。

 もしかしたら、今までの「玄関中でウンチやオシッコ」というのが「玄関全部が自分の縄張り」という意味で、一種の「縄張り意識」だったのかもしれない。

 何にせよ、きちんとトイレを覚えてくれたのは大きな進歩だ。こんなことならば最初からケージの扉を閉めておけばよかった、と思ったくらいだ。


 なおベッドは汚れたら洗う必要があるので、予備としてあとから少し買い足している。

 最初のベッドは父がペットショップで買ってきたものであり、おそらく値段もそれなりだったのだろう。ふかふかで柔らかく、温かそうだった。

 その後、私が100円ショップでふたつ買ってきたが、それはどちらも五百円の安物。全くふかふかしていない。

 ただし「安物だから」ではなく、時期的に「夏物だから」という理由のようで、最近同じ店で見たら、五百円でもふかふかのベッドだった。それも買い足して、今ではベッドは四つになっているが……。


 六月の時点に話を戻すと、冬用ひとつと夏用ふたつ。エブリスタ版のエッセイではここでケージの写真を掲載しているのだが、そこでは夏用の片方が映っている。涼しいベッドのはずなのに、体毛で覆われた犬にとっては、これでも暑かったらしい。

 ケージの地べたの方が涼しいとみえてベッドの下に潜り込んだり、同じくベッドより涼しいとみえてプラスチック製のトイレトレーをベッド代わりにしたり、という場合も出てきた。

   

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