5月(その1)

   

 五月十三日。

 父が車でペットショップまで迎えに行き、いよいよ子犬が我が家にやってきた。


 来た瞬間は私は外出中で、帰宅すると飼育ケージの組み立て中という状況だった。

 子犬は運搬用ケースに入れられており、その隙間から一生懸命こちらを覗いている。私が手を近づけると、舌を出してペロペロと舐めてきた。

 おお!

 犬が私に懐かないのではないか、という心配は杞憂だったらしい。


 飼育ケージの完成後、子犬を運搬ケースの外へ。

 フェンスで区切った区画を自由に歩かせる。

 小さくてモコモコした生き物だ。本当にまだ赤ちゃんで、犬というより生きたぬいぐるみみたいだ。

 せっかくなので写真を撮ろうとしても、なかなか前を向いてくれない。抱きかかえてみる際、前脚に手をかけるような持ち方になってしまった。良くない抱き方だが、この時の私はまだそれを知らなかった。


 こうして少し間、子犬が歩き回る様子を微笑ましく眺めていたのだが……。

 ここで問題が発生。子犬がフェンスを通り抜けてしまう!

 子犬の体に対して棒と棒の間隔は十分狭く見えたのだが、実際には「子犬の体」はモフモフの塊。かなり狭いところでもくぐれてしまうらしい。

 そこで、フェンスの内側に段ボール箱――飼育ケージの箱とペットフェンスの箱――や運搬ケースなどを置くことになった。人間が出入りするときはフェンスの一面を箱ごと動かす形になり、フェンス備え付けのスイングドア機能は無駄になった。


 なお、父が「狭いところに閉じ込めるのは可哀想」と考えため、飼育ケージの扉は常時開放しておく方針となる。

 玄関の段差が犬には辛いかもしれないと考えて、クッションも用意された。


 人間が部屋側に上がってしまうと、子犬は玄関を我が物顔で歩き回るだけでなく、境界となっている段ボール箱にもたれかかって「こっち来て遊ぼー!」という態度を示したりする。

 犬にしてみれば寂しいのかもしれないが……。後脚だけで立ち上がり、前脚で段ボール箱をカリカリひっかく様は、見ている私としては、とても可愛らしく感じるのだった。

   

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