貞操逆転社会で喫茶店をします。

コインタートル

第1話 オープン



静かな朝、街外れの商店街にある一軒の小さな喫茶店が開店の準備を終えようとしていた。店名は**「カフェ・アンリミテッド」**。店内は昭和レトロ風のインテリアで統一されており、アンティーク調の木製家具が温かみを演出している。


22歳の若き店主、結城悠馬は、カウンターの中で初めての開店を控えた緊張感と高揚感を胸に抱えていた。


「よし、あとは看板を出して……っと。」

店の外に出て木製の「OPEN」の看板を立てる。まだ朝早いため、人通りは少ない。それでも、長年夢見てきた自分のカフェがついに形になった喜びが、じわじわと胸に広がる。


店内に戻り、初めて淹れる記念の一杯を準備するため、コーヒー豆を挽き始めた悠馬。香り豊かな豆の匂いが店内に広がり、彼は自然と口元を緩めた。


「これからどんな人が来るんだろうな……。」


一人ごちりながら、挽いた豆をドリッパーにセットし、お湯を注ぐ。ポタポタと落ちていく琥珀色の液体を眺めていると、不意に店全体がふわりと揺れるような感覚に襲われた。


「……ん?地震?」


だが、グラスもカップも微動だにせず、音も何も聞こえない。不思議に思いながら、窓の外を覗いてみると――そこに広がっていたのは、見慣れたはずの景色ではなかった。



外の街並みは明らかに変わっていた。建物や人々の姿はどこか現代日本風だが、微妙に違和感がある。通りを行き交うのは圧倒的に女性が多く、その中に混じる男性はわずか。しかも、その男性たちは全員、スーツをきっちり着こなし、冷ややかな目つきで周囲の女性を見下ろしている。


「……え、なんだこれ。」


悠馬は戸惑いながらドアを開け、一歩外に出た。すれ違う女性たちは、彼を見るなり驚きの表情を浮かべ、すぐに丁寧な態度に切り替わる。


「あの、そちらの方、喫茶店をやってらっしゃるんですか?」

「あっ……すみません、貴重なお時間を取らせてしまって……!」


突然話しかけられたかと思うと、すぐに女性たちは深々と頭を下げる。そして、「失礼しました!」と去っていく。悠馬は唖然としてその場に立ち尽くした。


「いやいや……俺、何かした?」


店内に戻り、再び窓の外を観察する。この時、結城は知らなかった貞操逆転モノの世界に来たことを

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