潜入!異世界キャバクラ!

「キャバクラだって?」

アンノは思わず口にした。


「そう、キャバクラ~」


何でまたキャバクラなんかに!捜査するんじゃなかったのか!?


「これも捜査の一環なんだよ」


キョーコが会話に加わる。ヒョーカにからかわれている姿がいたたまれなくなったのだろう。


「というのも新魔研の資金調達として使っている下部組織が運営している店でね。資金の洗浄やらを請け負っていると調べがついている」


つまりは実地で捜査を行うってことか……


「しかし、キャバクラに遊びに行くだけでは捜査にならないんじゃないですか?」

純粋な疑問をぶつけた。


「ご明察~。ただ遊ぶんじゃなく、弟くんはキャストの子にアホな客のフリして資金調達の話を聞いてみてほしいんだよね~」

ヒョーカは答える。


そんなもので情報が得られるとは思わないが……


「まぁ捜査なんてダメ元なもんなんだよ~。100捜査して1当たったらいいのさ~。ショットガンアクションだね~」


そういうものなのか……?魔法で公安というからもっと派手な捜査を想像していた。


「ちなみに私も潜入捜査の一環として働いてるからね~。アイスって源氏名だからアイスの紹介って言ってお店に来てね~」


ヒョーカが働いているだって?セクシーなドレスを身に纏って……?

妄想が膨らみ、思わずゴクリとつばを飲む。


「わかりました……行きましょう」


諜報員としての仕事を受け入れようと思った訳では無い。ただ、困っている人は見過ごせないだろう?

……決してセクシーなドレスを見たいわけではない。


「エロいね~弟くん、エロスだね~」


ヒョーカは見通したかのようにニヤニヤ突く。


「ちっちがいますよ!!」


「……コントはいいから捜査だけしっかりやってくれ」


キョーコのツッコミでこの場は解散となった。


とはいっても行ける場所もなく、キョーコの部屋で時間を潰していた。

所持金が無いことをキョーコに話すと、捜査用の端末が手渡された。元々使っていたもののようで、資金などもこちらに入っているとのことだった。



夜も更け夕食を食べ終わった頃合いで、ヒョーカに言われた店へと足を運んだ。


「そういや18でキャバクラって行ってもいいのか……?」

緊張で余計なことを考えている。そんなことよりも捜査に集中をしなければならない。


黒塗りの大きな扉を開けると、大柄な男が話しかけてきた。


「いらっしゃいませ。こちらで少しお待ち下さい」

革張りのソファに通される。照明は薄暗いが、アップテンポな音楽が気分を盛り上げる。


「こちらのお店は以前ご利用されたことはございますか?」


「いえ、ただアイスさんの紹介でこちらに来店させていただきました」

ヒョーカの名前を借りる。とにかく未成年だということがバレないようにしなければ。


「そうでしたか。ではこちらへどうぞ」


男はそのまま案内を始めた。高級なファミレスのように仕切られたソファがあったが、飲食店とは異なりソファの前にはローテーブルが置かれていた。

そのうちの一角に通され、いわれるがままソファに着席した。


「こちらで少々お待ちください」


大男はそういうと店の奥に立ち去った。緊張でのどが渇いた。初捜査、初キャバクラ。緊張でめまいがしそうなほどだ。


少しすると奥から見覚えのある顔が現れる。ヒョーカだ。


すらりと伸びた足、短いスカートだがシックな雰囲気でまとまっている。

スカートはタイトなものとなっており、ちらりと見える太ももはスカートに収まりきっていない。

大きくあいた胸元には真っ白な肌が見えており、どうしようもなく視線を引き付ける。


「お、きたね~」


ヒョーカは横にぽふっと座った。

ふわりと香る匂いはくらくらするほど甘いものだった。


「お客様は何を飲まれますか~?」


何……と言われても全くわからない。とりあえず……お茶?


「かわいいね~。扶桑茶をお願いします~」


奥にいる男にヒョーカが伝えると、数刻してお茶が運ばれる。

聞いたことのないお茶だったが、飲んでみると非常に甘美でおいしかった。


「私が接客してあげるのも面白いしからかいたいんだけど、そういうわけにもいかないのが残念だね~」


そうだ。捜査だ。ヒョーカに見とれている場合ではない。

いや、ヒョーカを見に来たんだっけ……?


「とりあえずこのお店のNo1の子にバトンタッチする予定だからいろいろと探ってみてね~。ちなみにこのお店は結構高いから、長居しない方が経済的だよ~」


衝撃の事実。そもそもキャバクラの相場なんてわからないから高いといわれても困るんだが。


「え、それはもちろん経費で落ちるんですよね……?」

純粋な疑問を投げかける。


「それは頑張り次第じゃないかな~?やっぱりなしのつぶてじゃ遊んだだけって判断になっちゃうよね~」


ヒョーカはにやにやとしながら伝えてくる。困った。端末にもお金が入っているようだったが、生活費含め無駄遣いをするわけにはいかない。


「あんまりまじめに考えちゃだめだよ~。美人と話せてラッキーくらいに考えな~。リラックス、リラックス~」


何だか気が抜けてきた。潜入捜査ってそんなもんでいいのか……?


「あ、準備ができたみたい~。それじゃあ私は失礼しますね~」


ヒョーカが立ち上がる。ちらりと見える太ももを目で追ってしまうのは仕方のないことだろう。


「浮気しちゃだめだよ~」

ヒョーカは終始にやにやしてる。


浮気ってなんだよ!

心の中で突っ込んだ。



終始からかわれっぱなしだったが、ようやく捜査開始だ。

ヒョーカのおかげか少し緊張は解けているようだった。


「お隣失礼いたします。」


横に座ったのはまさに美女を絵にかいたような女性だった。

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