バディ登場
「ふぅ……」
魔導書を読み終え、ため息を着いた。
多くの情報を頭に打ち込まれたため、脳がガンガンする。
「とりあえずわかったことを自分なりにまとめてみるか……」
諜報員としての性なのだろうか、転生前でもメモ魔と呼ばれていたことを思いだす。
・この世界はファンタジー世界であり、魔法やドラゴンなどの種族がいる。
・魔法が使えるようになった。一覧は以下。
①雷撃 電気で攻撃
②解析 コンピュータをハックできる
③飛行 高速で飛べる
④捕獲 別名パンドラの箱。強力だが発動には時間がかかる。事前準備でトラップのように発動可能。
→自分は雷の魔法が得意みたいだ。
・数年前から新魔術研究会(通称 新魔研)という組織を追っている。非合法な魔法研究を行っており、公安にてマークしている。アンノはこの組織の諜報活動中に転生させられた。
「とりあえずはこんなものか……」
魔法が使えるようになったことは大きいな。とてもワクワクする。
少しだけ使ってみるか……
まずは簡単な魔法を使ってみよう。雷撃を考え、手のひらに集中した瞬間──
ドガン!!!
目の前が真っ白になり、おいてあったローテーブルが弾け飛んだ。
「……」
使えるようになってもコントロールは難しいってことか……
少し泣きそうになりながらソファに腰掛ける。一日の疲れが出たのか、そのままソファで眠ってしまった。
起きると日が昇り切っていた。壁掛けは8時を少し回った時刻を示している。
「そういえばまた翌日来てくれと言っていたな……」
諜報員として活動するかはさておき、現時点で頼れる人間はキョーコしかいない。
軽くシャワーを浴びると、足早にマンションを出た。
「やぁ、来たね」
受付でキョーコの名前を伝えると、地下の角部屋へ通された。
キョーコは少し嬉しそうに話している。
「少し…思い出したんです」
魔導書のことは伏せ、昨日の記憶について話し始めた。
この世界のこと、魔法のこと、捜査対象のこと……
「そうか。少しずつだが快方に向かうのかも知れないな。上司としても私個人としても喜ばしく思うよ」
そういうキョーコは本心から心配してくれているようだった。
「さて、昨日も言った通り君には公安の諜報員として活動をしてもらう。我々の組織については……思い出していないみたいだね」
キョーコは続ける。
「まぁいい。簡単に説明しよう」
そう言うと、一枚のレジュメを手渡してきた。
「詳細はその紙に記載があるから読んでおくように。一般に公表されている情報が主だが、機密情報もあるため記憶したらすぐに焼却すること」
レジュメには公安組織の役職などの情報が記載されている。
「ちなみに我々は公安0課、正式名称はヌーラスというが、組織の存在も含めて一般には全く公表もされていない。特に秘匿性の高い事件や情報を扱うことを職務としている」
「今回対応してもらう新魔術研究会については、本来公安4課の受け持ちであるが、事件の異質さと難度から我々も協力して捜査を行っている状況となる」
新魔術研究会。以前の自分を転生させた組織だ。
「少し話は変わるが、転生後の君は旧アンノの弟として登録させてもらった」
突然の話に驚きを隠せない。
弟?何でまた。
「君は優秀な諜報員だったため各方面から恨みを買っていてね……本調子ではない君をそのようなものから守るには、身分を隠すことが最善だと考えての判断だ。理解してくれ」
「なるほど……」
納得がいくようないかないような、気の抜けた返事をする。
「この件は私を含む数名しか知らず、公安内でも秘匿としているので、これからはアンノ弟として活動してくれ。旧アンノは行方不明扱いとしていたんだが、正式に死亡したことにするよ」
自分が死んだ扱いというのはどうも気分が悪い。
「さて、前置きが長くなったが本捜査"新魔術研究会の違法性検挙に向けた捜査"におけるバディを紹介しよう。転生前にバディを組んでいた人物だ」
そう言うとキョーコは電話をかけ始める。二三言葉を交わすとそのまま通話を終了した。
数分後、小柄な少女が部屋に入ってきた。
圧倒的な美少女の登場に、少したじろいでしまった。
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