異世界帰りの趣味人おっさん、魔法少女の師匠になる。

夏目八尋

序章

第0話 プロローグ! 戸尾鳥さん家の魔法少女-リリエルジュ-


 定時に仕事を終え、家に帰る。

 階段を上り、扉の鍵穴に鍵を差しこみ、ノブを回して開いたら。


「あ、お帰りなさい。雄星さんっ!」


 エプロン姿の小さくて可愛い女の子が出迎えてくれた。


「夕ごはんの準備はできてますから、着替えてリビングに来てくださいねっ!」


 明るく元気よく、キラキラ笑顔で俺を出迎えてくれた美少女は、青く長い髪を揺らして振り返り、廊下を駆けていく。


 彼女の言うとおりに自室で着替えリビングへと顔を出せば、そこには――。



「あ、ゆう兄! おかえりなさーい!」


「お邪魔してます。お兄さん」


「おかえりぃー、もうあたしさんたちの準備はできてるよぉ」


「ゆーせー。はやく、ここ、すわってー」


「みんなであんたを待ってたのよ。早く座りなさいったら!」



 65インチテレビの前の横長なテーブルを囲うようにして、5人のカラフルで愛らしい美少女たちが、それぞれソファやクッションに座って俺を待っていた。



「ゆーせー、ここ」


「はーい。ゆう兄はここね、ここ!」


 言われるがままソファの真ん中に腰かけると、左右からぎゅっと抱き着かれる。


「ん、いい……」


「えへへー!」


「まったく、あんたたちは普段から甘えすぎなのよ。ちょっとは自制しなさいな」


「そう言ってさぁ、本当はそっちが甘えたいんじゃないのぉ?」


「バッ、そんなワケないでしょ!! あんたじゃあるまいし!」


「怪しい。詳細な調査を行なうべき」


 とたんに俺の周りを美少女たちが囲み、わちゃわちゃし始める。

 こんな状況にも、俺はもうすっかり慣れっこだった。



「雄星さん、お茶持ってきましたよ」


「ありがとう」


 そこにエプロン姿の女の子が戻ってくれば、ソファの前のテーブルに、麦茶が入った俺の普段使いのグラスを置き。


「……えいっ」


「「「あーーー!!」」」


 おもむろにエプロンを脱いだかと思えば、俺の真正面、両足の隙間にすっぽりと自分の体を埋めて座ってしまった。



「さ、約束の映画鑑賞。始めましょう! ねっ、雄星さんっ!」


「ああ、そうだな」


 再びわちゃわちゃしだす美少女たちの中で、俺はリモコンを手に取りテレビへと向ける。


「スタートするぞー」


「「「はーい!」」」


 合図をしたら即座に返事が返ってきた。

 みんなどうして、いい子たちばかりだ。


「それじゃ、スタート」


 こうして随分と様変わりしてしまった、俺の趣味の時間が始まる。


 どうしてこんなことになってしまったかと言えば、それは数ヵ月前。

 俺が異世界ファンタルシアから4年の戦いを経て帰って来た、その次の日までさかのぼる。

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