第254話 そのものだよ

『聖教国』


 正式名称『ソレストヴィング聖教国』。

『開祖イオリ=A=シュッテンバーグ』によって興された『人造神ヴェイダ』を祀る宗教国家。

 エクシア王国とクアンタム王国、両国の中心にそびえ立つ山『神山メメントモリ』を領地とし国として認められ、総本山としている。

『人造神』であることを公表しながら布教活動を行わないにも拘わらず、その信者は多い。


『聖女』

 聖教国に選ばれた特殊な能力を持つ女性を指す。一般的にはスキル『神託』や『予知』などを持っているらしい。


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 いや、まあ…当然ながら俺もこの辺のことは知っていた。ツッコミどころだらけなのも知ってた。

 それでいて敢えて無視を決め込んでいたのに、ここにきて絡むことになるのは非っっっ常に不本意である。


 じゃあ断れって?


 バカ野郎っ!俺にアイアリーゼさんのお願いを断れるとでも思っているのかっ!?無理に決まってんじゃんっ!


 じゃあ受け入れろって?


 うむ…仕方ない。受けた以上は最低限の仕事はしようと思う。

 聖女と絡まない…のは無理だろうから、極力絡まないくらいで…。


 ちなみにエクシア王国の建国は聖教国内の内戦が理由だったりするらしい。

「神そのものだよ」と宣った一人の枢機卿が大分好き勝手やったらしいが、ソレを止めたのが今の四家のご先祖様なんだとか…。

 うん…だろうね。知ってた。………いや、知らんけど知ってた。

 

 さらにちなみに、その当時の聖女はスキルではなく職業が『予報士』だったとかなんとか…。

 うん…だろうね。


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「…で、何で聖女様が同行するなんてことに?」


 俺はアイアリーゼさんに当然のことを聞く。


「年の頃が君たちと同じくらいでね。聖女としての仕事もあるんだろうけれど…羽を伸ばしたい。…が本当のところじゃないかな」


 それは…わからないでもないが、それはそれで面倒くさいな…。


「言っても聖教国の護衛も付くんでしょ?わざわざ冒険者ギルド経由で依頼しなくても…とも思うんですが…」

「そうなのよねぇ。その辺りがちょっとわからないのよねぇ」


 どうせ職業『聖騎士』とかなんとか、カッコ良さげな奴らが護衛に付くはず。プラスで護衛を頼むなんてちょっとおかしいと思わざるをえない。


「あと、わざわざ俺に頼んだのは?」

「それが実は聖女様自らの希望でね。年も近いし、どうせ同行しているんだから…と思わないでもないんだけれど…」


「………だけれど?」

「多分、国王から話がいったんじゃないかな?」


 あんのクソ国王ぅっ!!


「君が魔人を倒せるほど強いのは私も聞いているし、それほどの力なら何があっても多分平気だと思っているんじゃないかな」


 まあ『何があっても平気』ってのはあながち間違いではないけれど、ソレは二の次で多分俺を売りやがったな?

 俺の力を知っていて、任せとけば良い…くらいに思っているんじゃなかろうか。


 国王め…絶対に許さん。今度、嫌がらせをしに行こう。俺がそう誓ったのは言うまでもない。

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