第247話 『ティエリア=フォン=ヴァーチェ』

前回の続き


 この二年の間に起きた大まかなことをダイジェストで語っていたら続いてしまった件。いや、申し訳ない。と、誰に?かはわからないが頭を下げつつ、続きをどうぞ。


 結局、新型の馬車に乗ることもなく、ヴァーチェの領主邸には家族総出で徒歩で向かうことに。……いやいや、なんでやっ!?徒歩で行く方がおかしくないっ!?しかも家族全員てっ!?


 貴族なら短い距離でも馬車で移動…がデフォルトじゃん。というのは俺の偏見のような気もするが…


「大丈夫だよユーリウス。領主様にはその旨は伝えてあるから」


 …と父さんは言うものの、いやいや、そうじゃなくてね?う~~~ん…父さんが言うのだから良いのか?まったく腑に落ちないんだが…。


 ま、まあいいか…。


 そして家族全員(二名除く)でテクテクとヴァーチェの貴族区を歩いて少し…このヴァーチェで一番大きな屋敷へと近付く。


 当然ではあるがヴァーチェの領主邸である。


 俺たちが到着するなり屋敷の大きな門は開かれ、出迎える準備は万端のようで、門の向こう側には領主の使用人たちがズラリと並んでいた。


 そしてその先には…


 眼鏡を掛けた、紫髪の女・性・の領主が待っていた。





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『ティエリア=フォン=ヴァーチェ』


 エクシア王国『始まりの四人』に連なる血筋で極大魔法を操ると言われているヴァーチェ公爵家。その中性的な容貌でありながら、美貌と威厳を持ち合わせる公爵当人は女性ながらに王国最強の魔導師『賢者』の称号を持つ。


 …と、されているけれど、そうかぁ…女性だったかぁ。と勝手に怪異に好かれる少年の声を思い浮かべていた俺は反省。


 まあ、確かに美しくはある。…が、俺にはアイアリーゼさんとミリアリーゼさんがいるのでごめんなさい。と心の中で謝っておく。


 ………ふむ、シーバスがいないとツッコミが疎かになるか、残念。いつもならツッコミが入るタイミングだったのだが、やはりシーバスがいない弊害が出るようである。


 ツッコミが無いのが弊害って何だっ!?


 そして…


「ようこそ、ヴァーチェ邸へ。ゼハールト家の方々にはしっかりとおもてなしをさせていただこう」


 うむ、どこかのにゃんこをお供にしている主人公の声とはまったく違うな…残念。


 しかし、どうやらしっかりともてなしてくれるようだ。ここはお言葉に甘えておこうか。


「領主様、この度はゼハールト家のためにこのような席を設けていただき、ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」


 父さんの言葉に合わせて、一斉に礼をする。


「うん、折角の機会だ。ゆっくりして楽しんでくれると私も嬉しい」


 ……ふ、普通だな。予想以上にヴァーチェの領主は普通だった。なんなら国王とかより全然取っ付き易そうなんだけれど…。


 …と、こうして『女性』だった公爵『ティエリア=フォン=ヴァーチェ』との邂逅を俺は果たしたのである。


 しかし、アレだな…。あのチャイナっぽいドレスのスリットはけしからんな…。そう思ってもツッコミが無いのは調子狂う俺であった。

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