第242話 『触らぬ神に祟りなし』

 ヴァーチェに帰還して翌日…。


 俺は王都での疲れを癒すべく、自主的に学校を休み、鋭気を養う予定…だったのだけれど、当然ながら家族に許しをもらえるワケもなく、元気に嫌々登校していた。

 元気に嫌々…は言葉がおかしいが仕方ない。


 謁見のため、とはいえ約二週間振りとなる登校だったのだが…


「ゼハールトぉっ!貴様っ、リリア」『バチコーンッ!』

「ゼハールト君…君がリリ」『バチコーンッ』

「ゼハールト…お前、リ」『バチコーンッ』


 何処から流れたのか、あっさりと情報が出回っており、朝一から貴族の子弟に絡まれる始末である。

 まあ、もれなく全員にビンタしたあと、土魔法で柔らかくした地面に頭から刺してあげたことを報告しておこう。文字通り、愉快なオブジェの完成である。


「いや、怖えよゼハールト…」


 そう言うのは冒険科のクラスメイトだ。おはよう。


「いやいや…あんなんしといて普通に朝の挨拶とかお前…」


 絡んできたアホ共が悪いというのに、なんか引かれた。…解せぬ。


 この後、一日過ごしてみたが、情報…というか噂に近いか…リリアーナ王女うんぬんの話だけで魔人うんぬんの話は特に出てはこなかった。

 国としては魔人の話の方が表に出るのを避けたいのだろうか?…分からん。


 放課後…。


 投げボルグしに行くか。…とグラム商会へ向かう。

 何も知らず…というか噂は知っているのか、ニヤニヤしながら現れたグラム商会長を魔力の糸で簀巻きにしたあと、命名『グラムボルグ』をお見舞いしてやった。

 回復させた後は正座させてからの説教タイムである。


「ユーリウス、お前、こんな老人にそこま」「黙らっしゃい」「はい」


 義祖父さんとアンタは元気過ぎて、俺の中では老人カテゴリーには入ってません。

 グラム商会長の足が限界まで痺れたところでツンツンしてやったあと、俺はゼハールト邸への帰路に着いた。


 帰宅した俺は、昨日は忘れていた義祖父さんへの投げボルグもお見舞いする。さっきの『グラムボルグ』で思い出したのだ。

 義祖父さんは俺の顔を見るなり何かヤバいっ!?と思ったのか、逃げ出そうとしていたが問答無用で魔力の糸で拘束。命名『マリウスボルグ』を喰らい、沈黙した。


 夕食時、父さんと母さんたちには王都でエリウスに絡まれたことを報告しておく。


「そうか、エリウスは変わり無い…か」

「エリウス…」


 少し悲しい顔をする父さんと義母さん。まあ、あんなんでも実の息子だしな…。俺になんとか出来れば良いのだけれど、何回ぶっ飛ばしても俺がやったんじゃ駄目そうなんだよなぁ…。


 そして時は少し過ぎ…俺はこの異世界では成人となる十五歳になる年、そして中学校では最上級生の三年生へと進級する年を迎える…。


 ………え?リリアーナ王女の件?

 よく言うだろ?『触らぬ神に祟りなし』って…。………え?ソレがフラグだって?………………そ、そそそ、そんなことあるはず無い…よね?

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