第197話 そう思うと急に…

「『魔人』が相手ではお前たちでは無駄に命を散らすだけだ。ここは私に………いや、俺に任せてもらおうか…」


 …あれ?何で国王が戦うことになっているんだろう…。周りの奴らも何かソレに納得しちゃってるみたいだし…。近衛の奴らとかは、良いのかそれで…。

 …というか俺の出番はよ?


「(完全に陛下に持っていかれましたね)」


 うるさいよシーバス、笑うのを我慢しているんじゃないよ。


「下がっていろ、ユーリウス=フォン=ゼハールト。奴の相手は俺がする」


 やだ…親バカを発揮していない国王がカッコいい…。そんなしょうもないことを考えていると魔人の嗤う声が…。


「ふ…ふははははっ!国王自らが相手をしてくれるとは好都合。この伯爵も良い場面にいてくれたものだ」


『好都合』とはどういうことだ?魔人=悪魔は何処の国にも派閥にも属さないはず…。いや、ソレは前世の勇者の頃の話か…。この世界が前世と違う世界なら、『そういう』こともあるのだろうか…。

 情報不足だな、全然わからない。


 国王も『久しい』と言っていた、ということは過去にも当然接触があったということ。イコール以前から魔人は存在しているし確認されているということでもある。

 調べて出てくるような情報なら知っておいた方が良いかもしれない。


「好都合…?ふん、こちらこそ好都合だ、わざわざ探す手間が省けた。滅びてもらうぞ伯爵級」


 あぁ、やっぱりこちらの魔人にもその等級で区別されているのか。

 俺の知っている魔人も何故か貴族に憑くことが多かった。そして魔人の強さは貴族本人の実力に…ではなく、貴族位に比例して強力な個体が現れるという、よくわからないカタチ、というかシステムだった。

 そこは普通、貴族本人の強さに寄らねえ?と思ったのは言うまでもない。…言うまでもないのだが、そういうことなので仕方のないことでもある。


 というワケであの魔人…伯爵級である。

 下から騎士爵級、準男爵級、男爵級、子爵級…そして伯爵級。上には侯爵級と公爵級の二つ。その上は王級…それは『魔王』………ではなく『魔人王』もしくは『悪魔王』とか呼ばれている。

 実際のところ、人族からみたらどれも大して変わらないワケで…その辺りの区別は結構適当だったりする。


 そして魔人の伯爵級は…


「ふははははっ!俺を伯爵級とわかっても恐れもしないかっ!良いね、楽しめそうだ…なあエクシア国王」


 下級の悪魔でも、普通の人間よりはるかに強い。その伯爵級である。当然、弱いワケがなく、冒険者ギルドでの討伐難易度はB級以上………あれ?シーバスでも倒せるじゃん?


「楽しむ気など無い…俺が勝利して終わりだ」


 あれ?そう思うと急に…茶番にしか見えてこないんだけど…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る