第196話 …じゃない…アレは…

 宰相らしきオッサンのゴーサインも出てるっぽいので、サクサク片付けようかっ!と俺はペロリと上唇を舐める。


 さて…どう倒してやろうか。ここは一発、大技をかまして、周りの奴らをビビらせてやろう…と思い、決め技を考える。

 タイガードライバーが良いか…?タイガースープレックスが良いか…?それともエメラルドフロージョンが良いか…?

 前々世…日本人で学生だった頃に好きだったレスラーの技を頭に浮かべ、どれにしようか悩む。


「………の………で…」


 エルボー三連打からのローリングエルボーも捨てがたいが…などと考えていると、確か伯爵って言ってたか?…伯爵のオッサンが何か言い出した。

 声が小さくてほとんど聞きとれないが…。


「き…貴様の………子供に…男爵ご……の子弟………で……………で、………に…」


 ………何だ?何を言っている?


「………………しだ」


 様子が………それに…


「それにし……………………子だ…」


 この魔力の『質』って確か…


「いや…………に任せ………だったか…」


 シーバス………警戒しておけ。特に周りに被害が出ないようにな…。


「(かしこまりました…)」


 こいつは…


「おいっ!そいつの周りにいるオッサンたちは離れろっ!様子がおかしいっ!近衛はすぐに防御出来るように準備っ!!」


「………何だ、小僧。どうやら貴様は気付いているようだな」


 今、喋ったのは伯爵か?いや、しかし今の声は…アレは伯爵じゃない…アレは…


「ハッハァ!良いタイミングで負の感情を大量に出してくれたぜっ!コイツはぁ!」


 アレは『魔人』。


 悪魔にその身体と魂を呑み込まれた者…。


 ブワァッと紫色の魔力が伯爵から吹き出す。この状態は…


「クックックッ…コイツはもう完全に取り込んだ。この状態なら全ての力が使えるな…」


 グッ、グッ、と両の拳を握り、感覚を確めている。アイツの言った通り、完全に取り込まれた…というよりは呑み込まれたのだろう。

 チッ…あの伯爵のオッサンを助け………………られなかったけど、それはまあ別にいいか。それの方が俺の被害は減りそうだし…。


「(ユーリウス様………それはさすがにどうかと…)」


 黙らっしゃい…。それよりシーバスは国王と宰相?のオッサンを頼…


「『魔人』とは久しいな…」


 コッ、コッ、と玉座から立ち上がり、数段下がっている俺たちのところに降りてくる国王。その体内では魔力を練り上げているのが分かる。


「陛下っ!?」

「「「陛下っ!!!?」」」

「「「お下がりくださいっ!!!」」」


「『魔人』が相手ではお前たちでは無駄に命を散らすだけだ。ここは私に………いや、俺に任せてもらおうか…」


 国王にしてはまだ大分若い…セツナ=フォン=エクシアがそう言い放ち、練り上げていた魔力を解放…赤い魔力を身体に纏い、その手に持っていた王杖を剣へと変化させていた。

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