第192話 振り出しに戻る

 王都まで呼びつけられて、国王に謁見までさせられて、出てきた話が『娘に何かしたん?』…である。

 しかも内容が『俺のことを嬉しそうに話すから…』とか、全然知ったこっちゃないんですけどっ!?

 要約するとアレかな?『娘が男の話をして、その男に嫉妬する父親の図』…だろうか。


 うわっ、何それ、面倒くさっ!そんなことで俺は呼び出されたんかい…。


 いや…ちょっと待てよ。

 じゃあ、何で周りの貴族たち、近衛たちは俺に睨み付けるような視線を向けてくるんだ?国王の態度とそこはイコールにならないんだが…。


 ん~………情報が足りなくて状況が把握出来ん。もう少し様子を見つつ、情報を集めたいところ…なんだけれど…。


「何もしていないのに娘があんな嬉しそうに話をするワケがないだろうっ!?さあっ、何をしたのか吐けっ!ユーリウス=フォン=ゼハールトッ!!」


 国王は顔を赤くし、怒っていらっしゃる。今にも「トラ◯ザムッ!!」とか言っちゃいそうである。うん…凄く面倒くさい。

 しかし内容が家族のことだからな…。面倒だし、イラッとしたけれども、怒るに怒れない…というのが俺の心境である。

 どうしたもんかね…。


「いや………吐け、と言われましてもで」「そして、その後のことだ…」


 ここで被せんのかよっ!?


「国内外問わず打診されていた婚約話を、いつもならば濁すようにやんわりと誤魔化してくるのにだ………貴様の話の後はキッパリと断りを入れてきたのだ。もちろん嫁に出すつもりは無かったが…」


 無かったんかいっ!?

 お、おぉ…周りの貴族たちの何割かが、ガッカリしているじゃないか。あと近衛の何人かも…。ああ、コイツらが打診してた家とか本人なワケか…。

 あと、ガッカリした後に俺を睨むの止めてくれない?今の話の中に俺が悪いところあった?


「王よ………私情を挟むのは…」


 隣に立っている宰相か誰かは知らないが、さすがに困ってらっしゃるようだ…。ただ、そこで困るなら俺を呼ぶこともおかしいと思ってるでしょ、きっと。止められなかったの?


「黙れ!ユーリウス=フォン=ゼハールトッ!これでリリアーナと何もない、では説明が付かないだろうっ?さあっ、何があったいや、何をしたっ?吐けっ!」


 ええええぇ…何か振り出しに戻る、みたいな感じなんですが…ええええぇ…。め、面倒だな…。もう記憶が無くなるまでグーで殴った方が早くない?


「(それはお止めになった方が良いかと…)」


 分かってるよシーバス、さすがに国王にグーパンとかはしないから。俺が困った顔をして、ふっ…と宰相だかのオッサンを見るとサッと目を逸らす。あ、あのオッサン、目ぇ逸らしやがった。ということはある程度こうなることが分かっていたんじゃないか?


 め、面倒くせぇ…。

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