第116話 違いますよ。
入学三日目。
本日も登校したら校門前に見たことがあるような気がする三人組がいる。あと見たことがない奴が一人…。
「面倒だな…」
俺はそっと『隠密』を起動。四人の横を悠々と通り下駄箱へたどり着いた。
この後、『隠密』の解除を忘れた俺は…
「さっき、ウチのクラスの下駄箱の扉が勝手に開いて勝手に閉まったの」
「教室の扉が開いたと思ったら誰もいねえんだ。なのにその後、勝手に閉まってさ」
しまった。忘れてた。
このまま解除するとアレだから、一回教室から出てから解除するか…と教室を出る。
『隠密』を解除して、もう一度教室に入り…
「おはよう」
はあ、面倒だな、まったく…。
授業間の小休憩時の呼び出しに、瞬時に『隠密』を起動しようと少し待ち構えていたのだが、午前中は来なかった…。
諦めたか?と思い、気を抜いて弁当の準備。
エルディアめ、昨日と違うメニューのラインナップでこれほどまとめてきたか。………美味い。
今度また一緒に新しいメニューでも考えるか…。
学校は当然ながら人が多い。『マップ』を起動するどたくさんの光点が表示される。光点の赤、青、色なし、など多数の色が入り交じり、非常に見辛いので学校内は『マップ』を基本オフにしている。
そして気を抜いて弁当を食べ終わり、油断して水筒の紅茶を啜っていたのだが…。
「お前がユーリウス=フォン=ゼハールト、だな…」
教室の入口ではなく、ベランダ伝いに窓から来たかぁ…。
俺は後ろから掛けられた声に振り向く。
そこには見たことの無い、ガタイの良い上級生の姿が…いや、こいつ何処かで…。
………朝、校門前にいた奴か…。………面倒だな。ならば俺はこう答えよう!
「違いますよ」
「あん?お前じゃないのかよっ?………ちっ!」
その時、クラスメイトの…
「「「こいつっ!シレッと嘘付きやがったっ!?」」」
という声が聞こえた気がしたが気のせいだろう…多分。
「ならユーリウスって奴はどいつだぁっ!?」
怒鳴る上級生に教室は静寂を宿す。
誰もが上級生と目を合わさないように顔を背けるが、「こいつです」と俺のことをバラさない辺り、貴族は簡単には話さない、ということを守っているのだろうか…。
まあ制服を見る限り、この上級生も貴族のようだが…。
「ふん…誰も喋らんか。なら…」
そう言い、ザッと教室内を見回す。
「今いるのは半分くらいか。まあいい…野郎を一人ずついたぶれば、喋る奴も出てくるだろう」
ザワリ…ざわつく教室内。怯える女子たちに固まる男子たち。
クズい考え方をする上級生だな…。やり口が悪い奴、そのまんまだ…。
ま、今いるクラスメイトは俺のことをバラさないでいてくれたしな…。恩はちゃんと返そうか…。
『ガタッ…』
俺は椅子から立ち上がり…
「あん?さっきの奴か…。何だ?お前からヤられるか?」
「下級生を脅して人探しか…貴族の子弟のやることじゃねえな…。あと声がでかくて煩せぇ…」
「ぁあん?…んだとぉっ?」
ギラリと睨み付けてくる上級生。言っても所詮十四歳か十五歳のガキだ。ウチの義祖父さんやシーバスと比べるまでもない。
足りてねえよ、何もかもが…。
「黙れ、ガキ…。潰すぞ…」
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