第115話 残念と優秀

『ガラガラガラッ…ピシャーンッ!!』

『ユーリウス=フォン=ゼハールトはいるかぁっ!?』


昼休みが終わり、午後の選択授業。

午後一の授業が終わった直後に遠くの方なのに大声だと分かる声で俺の名を叫ぶ奴がいるようだ。恐らく貴族科辺りに行ったのではないだろうか。


『ガラガラガラッ…ピシャーンッ!!』

『ユーリウス=フォン=ゼハールトはいるかぁっ!?』


少し近付いた。騎士科に行ったのかな?


『ガラガラガラッ…ピシャーンッ!!』

『ユーリウス=フォン=ゼハールトはいるかぁっ!?』


さらに近付いた。多分、魔法科に行ったのだろう。


『ガラガラガラッ…ピシャーンッ!!』

『ユーリウス=フォン=ゼハールトはいるかぁっ!?』


大分近付いた。だが残念、商業科にも俺はいないよ?

ここで授業間の小休憩が終わるチャイムが鳴る…タイムアップだ。


次が俺がいる冒険科だったのになあ、残念な奴だ。


午後二の授業が終わる。

チャイムが鳴り、講師の冒険者が教室を出た瞬間、俺は『隠密』を起動。

気配を遮断し、光学迷彩の如く姿を消す。


『『迷彩』スキルを獲得、『隠密』に統合します』


お?何かスキルを獲得した。さらに精度が増した。


『ガラガラガラッ…ピシャーンッ!!』

「ユーリウス=フォン=ゼハールトはいるかぁっ!?」


「あれ?さっきまでそこにいたのにっ!?」

「いなくなってる…トイレか?」


俺がいなくなったことに驚く冒険科のクラスメイトたち。いや、いなくなってはいないんだけどね…。

俺を呼びに来た奴なんかは既に涙目だ。可哀想に…。


「な………何で何処にもいないんだあぁっ!?」


「うわぁぁぁん」ダダタ…と叫んでいるのか、泣いているのか、わからない声をあげながら彼は走って行った。

君の気配察知能力が低いからいけないんだよ?と俺は自分が『隠密』を起動していることは棚上げする。


ちなみにこの後の冒険科の授業は、校外に出て冒険者ギルドへ行き、登録時の説明、仮登録をして、現地解散、という予定である。………残念!


授業開始のチャイムを前に『隠密』を解除。一人、クラスメイトが近付いてきた。


「お前『気配遮断』使ってたろ?凄えな、本当にいなくなったみたいだったぜ?」


へえ…このクラスメイトは俺が何をしたか察知したみたいだ。実際はその上位スキルに当たるんだけど、わざわざ教えてやることもない。

…が、なかなかやるじゃないか。こんな奴もいるんだな。


『鑑定』すると、彼はやはり『気配察知』のスキルを持っていた。『看破』を持っていれば『迷彩』も見破れるだろうが、『看破』は上位スキルに位置するので持っている者は少ない。

それでも、この歳で『気配察知』持ちは珍しいのではないだろうか。斥候職として優秀な人材になりそうだ。

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