第50話 やはり俺の…間違っている!

………不満である。


何が不満かと言えば『食』の調理法。大半が焼くか煮るかしかせず、ほとんどが塩のみの味付け。良くて塩胡椒だ。

元日本人としては許せんワケだ。俺はてこ入れを行うため、厨房に突入した。………したのだが…。


異世界転移・転生の知識チート定番『マヨネーズ』を作成しようとゼハールト家の厨房を任せているエルディアに材料の準備をたのんだが、まさかの材料が揃わないという、どうにもならんアクシデント。

「材料の準備をっ!ドヤァ」ってした俺のドヤ顔を返してっ!と思わないでもないがいたしかたない。


材料が無い理由にもちょっと納得である。


生卵=腹壊すから無い。

植物油=牛脂とかじゃ駄目なのか?と多分植物から取れる油を知らない。

酢=そもそも知らない。


こんな状態じゃあ材料としてあるワケないよね!…ってことである。


だが俺はまだ諦めないっ!てこ入れ開始直後で頓挫したなど…日本人の魂を嘗めるなよっ!と右手から黒龍を出しちゃいそうな人のような台詞を吐きつつ…


「シーーーバァスッ!!」


シーバスを呼び出す。


「こちらに…」


早いなっ!?


「買い物に行くぞ!準備をっ!」


「はっ!…少々お待ちを」


シュッ…と消えるシーバス。あれ?あいつ執事だよな…忍者とかじゃないよな?


「馬車の準備が整いました。ユーリウス様の準備はよろしいですか?」


早いよっ!?

俺の準備は…朝着替えてるし寝癖も直してるし、まあ良いだろう。


「よしっ!行くぞっ!」


…とシーバスを引き連れ厨房をでる。エントランスホールを通り抜け、玄関の扉を勢いよく開き、門の前に待たせてある馬車へ。

二度目の転生をしてから別邸でも本邸でもゼハールト家の敷地から出たことのない俺の初めての外出…さあ、行こうかっ!


~~~~~~~~~~~~~~~~


カラカラカラカラ…馬車はゆっくりと貴族区を進む。目的地は商業区。目的の物…とくに卵はその理由から売っているか不安だ。………だがそれよりも…。


「………何で義祖父さんが一緒なんだよ…」


「固いことを言うな。何か面白いことをするんじゃろ?儂も混ぜろ」


あんたは俺を一体何だと…いや、もういいや。


本邸を出る際、俺とシーバスが出ていくところを義祖父さんに発見され「儂も行くっ!」と騒ぎ出したので同行を許可。

結果、義祖父さんの着替えやら準備やらで出発は二十分程度遅れた。

何でそんな時間が…と思ったが…


「貴族には貴族故の準備が必要なんじゃよ」


と言われてしまえば納得せざるを得なかった。

しかし………狭い馬車の中に義祖父さんと筋骨粒々の執事…。あ、暑苦しいっ!


やはり俺の貴族生活に専属メイドがいないのは間違っている。

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