第2話 芦屋啓介の怪談/月浪縁
「合格お祝いの打ち上げ以来かな。科が違うと同じ大学の中でもあんまり会わないものなんだね。……ところで、なんだか顔色が悪いけど、どうしたの?」
月浪と話すのはかなり久々だった。同じ予備校に通っていたとはいえ、志望する学科が違えば関わりもなくなる。それでも月浪の人となりについて、多少は知っている。
高校一・二年の頃、志望学科が油画科だろうがデザイン科だろうが一緒くたにデッサンや塑像、平面構成の基本をやる期間——基礎課程のときに俺と月浪は同じ教室で絵を描いていた。その際、月浪は自由課題になると世界各国の妖怪やら幽霊やらをテーマに描きまくっており、しかもそれがやたらに上手かったので覚えていたのだ。〝ホラー・オカルトにやたら詳しい絵の上手い女〟と言うのが俺の
だから、俺は月浪に相談に乗って欲しいと頼み込んだ。
同じ予備校に通っていたから葉山のことも知っているし、月浪なら解決の糸口を見つけてくれるかも……とは正直思っていなかったけど、荒唐無稽な現象を一笑に付したりしない誰かに、それでいて冷静な第三者に、話を聞いてもらいたかったんだ。
月浪は唐突な提案に驚いていたようだが、俺がよっぽど切羽詰まっているのを察したのか、すぐに頷いてくれた。
近くにあった喫茶店に入って、俺は注文するや否や、葉山を発端にグループ展のメンバー、俺の身に起きた出来事を洗いざらいぶちまけていた。
月浪は黙って話を聞いたあと、そう間を置かずに尋ねてきた。
「修正する前の写真って、いま見れる? 見せてもらえると嬉しいな」
俺は月浪に、持ち歩いていたノートパソコンを開いて見せた。データを確認すると、月浪は目を瞬いて確認してくる。
「この人、葉山くんに似てるけど、本人、ではないんだよね?」
月浪の指摘に少々返事をためらった。
——そうだ。キャップの男は帽子のつばで顔立ちがほとんど見えないにもかかわらず、実のところ葉山に似ているのだ。
葉山自身の物言いからして別人なのだろうと思っていたのだが、月浪に改めて聞かれると、これが葉山ではないと百パーセントの自信を持って口にすることはできなかった。
けれど、一つだけ確信を持って言えることがある。先ほど葉山が撮った写真に写っていたキャップの男は、絶対に葉山本人ではない。
「違うと思う。さっき俺の目の前で葉山が撮った写真にも同じ人間が写っていた。アングルから言って自撮りでもない」
月浪は腕を組んで考えるそぶりを見せる。
「うーん……確かにそれは気味が悪いな。ドッペルゲンガーみたいな感じだし」
思いもよらない単語が出てきて、思わず月浪の言葉を反芻する。
「自分とそっくりの人間にもしも出会ったら死ぬって話の、あれか?」
キャップの男が葉山のドッペルゲンガーだというのは、妙にしっくりくる仮説ではあった。
だがドッペルゲンガーの伝承に今回のケースが完全に当てはまっているかというとそうでもない。
「葉山はドッペルゲンガーが自分に似てるって気づいてないみたいだし、何よりドッペルゲンガーを写真に撮っても死んでないぞ」
そこまで言ったところで、引っかかりを覚えて自問する。
「……もしかしてレンズ越しの遭遇は出会ったうちに入らないのか」
「さあね」
月浪は愉快そうに目を細めていた。動揺してあれこれ考える俺を面白がってる風に見えた。
「ちなみにドッペルゲンガーを二回見ると目撃者も死ぬらしいよ」
「……」
写真を修正したときに一回。先ほど葉山が撮った写真でもう一回。俺はすでに、葉山のドッペルゲンガーを見ている。
絶句した俺を月浪はおかしそうに見やって「芦屋くんの推察通り、レンズ越し、写真越しの遭遇はカウントされないんじゃない? ピンピンして見えるけどね君。あはは」などと笑って言うが、正直笑い事ではない。
このタイミングでウェイターが注文の品を運んでくる。クリームソーダとアイスティーだ。
俺がガムシロをかき混ぜながら静かに気分を害しているのに気づいているのかいないのか、月浪はちょくちょくアイスクリームをすくいつつ、気を取り直した様子で話を続けた。
「念のため確認するけど、葉山くんはこの写真の人物が自分と似ていることに気づいているわけではないんだよね?」
「ああ。そういうそぶりを見せたことはない」
不思議なことに、葉山はキャップの男と自分自身を結びつけて考えたりはしていない。むしろ俺や、グループ展示のメンバーの方が先に、あれは葉山自身なのではと疑っていた。
もっと言うなら、葉山が写真の修正を頼んできたとき、葉山がタチの悪いイタズラを仕掛けてきているのでは? と思っていた。
だが、血相を変えて教室に駆け込んできた葉山は本気で怯えているように見えて、これはもしかするとイタズラではないかもしれない、と考えを改めたのである。少なくとも、俺は。
「なら、やっぱり気づかせないほうがいいと思うよ」
月浪の言葉はそれとなくだがドッペルゲンガーを、心霊現象を当たり前のように肯定しているのだと気づいて正直驚いたが、続いた言葉はそれを覆すようなものだった。
「あと、早めにお祓いなり精神科なりにかかることをお勧めするね」
両者を一緒くたにしていいものが疑問である。
「……ドッペルゲンガーにお祓いと、精神科、両方効くのか?」
「ドッペルゲンガーは幻覚の一種ではないかとも言われているから、そっちの方向から治るならそれに越したことはないだろうと思って。お祓いはお祓いで、カウンセリング的な効果があると思うしさ」
月浪は心霊現象と幻覚、どちらの可能性も完全には否定はしなかったが、どちらかといえば幻覚の方を疑っているようだった。
だが、葉山が精神を病んでいるにしても、腑に落ちないことがある。
「俺もさっき見たんだぞ、葉山のドッペルゲンガーを」
「直接は見てないじゃない」
ほとんど間髪を入れずに言われて、思わず低い声が出た。
「なに?」
「芦屋くんは葉山くんのスマホの画面を見たんだよね?」
月浪は落ち着いた様子で事実を確認してくるばかりだ。俺が頷くと、月浪は心なしか厳しい声色で続けた。
「だったらそれ、見たうちに入らないよ。写真ならいくらでも捏造できるでしょう」
意味するところがわかった瞬間、怖気が走る。
「それは……葉山が、やっぱり自作自演してるってことか?」
「芦屋くんの話を聞いて、普通に考えればこれが一番自然な答えだと思う」
月浪は俺の問いかけに真面目な顔で見つめ返すばかりだ。
正直、ドッペルゲンガーが存在するという話よりはよほどあり得る話である。
あらかじめスマホに合成した写真を仕込んでおけば、心霊現象を演出することはできる。
クラウドで共有したデータにはもちろん葉山も触れる。俺や展示メンバーのパソコンに残っている修正後のデータに何も変化がなかったのも、葉山が手出しできなかったからだと考えるのが自然だ。
だが、いたずらにしては葉山の反応があまりに真に迫りすぎている。
何より——。
「なんのためにそんなことを?」
悪ふざけの範疇をとうに超えた自作自演を、友人に披露する意味も理由も、さっぱりわからないのだ。
「理由や動機についてはわからないな。そういう可能性もあるだろう、とだけ」
月浪はゆるく首を横に振ると、歯切れの悪い様子で続ける。
「ただ、話を聞く限りでは葉山くんはかなり激しく動揺していたり、気分が悪そうな感じだったりもするから、私も単なる自作自演とも思えないというか……ごめんね、きっぱりとしたことは言えないや」
当事者でない以上、あくまでも月浪は第三者として客観的な意見を述べるしかないし、それ以上のことはできない。手をあげて眉を下げる月浪のジェスチャーが示す通り『お手上げ』なのだろう。
「いや、こちらこそ急に引き止めてすまなかった」
俺は、葉山が本当に心霊現象に悩まされているのか、それとも月浪の言うように自作自演と思い込みで自家中毒に陥っているのかの判断ができなかった。この場ですぐに判断できるようなものでもなさそうだと理解した。
その時点で少しだけ冷静になれたのだと思う。
月浪を割と強引に喫茶店に引きずり込んだことが後ろめたくなってきた。
「すまん。月浪は用事があって渋谷まで出てきたんじゃないのか?」
「いや、用事が済んだ帰りだったんだよ。友だちの個展を見に行ってその帰り。気にしないで。おごっていただくわけだしさ」
月浪はおどけるように氷とアイスの残滓が残ったグラスを掲げた。話の最中にいつの間にかきっちりと飲みきっている。
それからふっと真面目な顔になって、テーブルに目を落とし「もしも」と呟く。
俺と目を合わせて、再び同じことを言う。
「もしも、本当に困ったことになったら、親戚にその手のことの専門家がいるから紹介してあげるよ」
「その手のこと、と言うと?」
「いわゆるお祓いとカウンセリングの両方。私、実家がお寺なんだよね。そして兄が精神科医なんだ。身内ながらキャラが濃いよねえ。あはは」
投げかけた疑問に返ってきたのは気楽な調子の告白だった。
納得と心強さと、そして妙な脱力感を覚えた俺はきっちり飲み切られたクリームソーダと、半分残ったアイスティーの代金を支払って渋谷を後にした。
……そして月浪の言う『本当に困ったこと』と言うのは案外すぐに訪れた。
合同展示の準備が着々と進んでいく中で、葉山が大学に出てこなくなったのである。
スクランブル交差点での出来事もあり、なんとなく嫌な予感はしていたが、葉山から「場所代は払うから合同展示は不参加にしてほしい」という連絡が来て、それっきり連絡がつかなくなった。返信も無視。電話にも出ないので、いよいよこれはまずいと思った。
他のメンバーはというと以前から葉山の挙動がおかしかったのも手伝って「場所代払ってくれるならそれでいいけど、どうしちゃったんだろうな、あいつ」となどと困惑しきりだ。仕方なく、俺が様子を見にいくことに決めた。
葉山の住むアパートは大学からほど近い国分寺市にある。かつて表参道などにあった同潤会アパートの劣化類似品のような見目をしており「レトロだ」「ヴィンテージだ」などとかつて葉山は気取って言ったが、いわゆるオンボロアパートだ。
三階建ての黄ばんだ白壁にはツタが覆い茂り、天気が崩れるとホラー映画のセットめいた湿気と不気味さが漂う。これは夜に訪ねても同じで、アパートのそばにあるこれまた〝ヴィンテージ〟で錆びついた街頭に照らされることでいわくありげな雰囲気が頂点に達するというわけだ。
これまで葉山の家を訪ねたときには「やたら不気味だ」と思いつつ、気にしないで二階の角にある葉山の部屋の扉を叩けたものだが、今回は家主まで怪奇現象真っ只中なのでどうしても気分は重くなった。
意を決してインターフォンを押すと、葉山はあっさりとドアを開けた。
顔色がやたら悪い以外は六畳の部屋も荒れておらずきれいだったが、ふと、画面が割れたパソコンが目に入った時に直感的な恐怖を覚える。
やはり、葉山はまともな状態ではない。
葉山はローテーブルを挟んで薄いラグの上に腰を下ろした。俺も同様に座り、一番に気になったことを口にする。
「葉山、顔色がひどいぞ。具合が悪いのか?」
「ああそう? そうかな……」
葉山の返事はどこかぼんやりとしていた。
「それなら病院には行った方がいい」
「ゴミ出し以外で外に出れてないからかな。日に当たってないからかも」
俺の顔がこわばっているのを怒っているのだと勘違いしたらしく葉山は「芦屋はたまに母親みたいなこと言うよな」と茶化した。しかしその口調にもキレがない。
「なんでそんなことになってるんだ」
「モニターがダメなんだ!」
パッと葉山は顔をあげて、目を爛々とさせながら言う。
「〝アレ〟が! パソコンとかスマホとかテレビにまで映り込むようになったんだよ。俺が〝アレ〟をなかったことにしたから。本当はそこに居るのに居なかったことにしたから怒ってるんだ……!」
俺は、震えながら支離滅裂なことばかり口にする葉山を宥めようと試みた。
「落ち着けよ。俺は……」
「落ち着けねえよ! 落ち着けるわけがないだろ!」
言葉を遮り、怒鳴り散らす葉山を見て、やっぱり俺にはどうしてもこれが自作自演だとは思えなかった。長い付き合いだが、こんなに取り乱した葉山は見たことがない。
「おまえ東京にどれだけモニターがあるかわかるか!? 全部に出てくるんだ、全部!」
肩で息をするようにしてこちらを睨む葉山に、思わずため息がこぼれる。
俺は、こんな風に、葉山を怒らせにわざわざこいつの家まで来たわけではない。
「葉山。俺は葉山が大学に出てこない理由も、グループ展に出るのを止めるって言い出した理由もきちんと知りたい。それで、できれば戻ってきて欲しいんだ」
高校の入学前に事故に遭った俺に、スポーツ推薦で学校に入ったくせに足を悪くして部活どころじゃなくなった運のない奴に、写真を教えてくれたのは葉山だ。
正直なことを言えば、腐りかけていた俺にとって時間を潰せるものがあればなんでもよかったんだと思う。でも、そのとき出会ったのが葉山で、写真だったことが、俺にとってどれほど幸運だったのかもわかっている。
俺が写真に夢中になったのは葉山のフットワークにつられたところもあるだろう。何度展覧会に連れ立って足を運んだかわからない。美大に受かるかどうかなんて全く確証のなかった時でさえ、写真での表現を仕事にしたいとなんの臆面もなく口にしていた葉山に励まされた。
俺がいま、美大生をやってるのは間違いなく、葉山のおかげだ。
ドッペルゲンガーだか自作自演だかなんだか知らないが、そんなものに足を引っ張られて葉山が写真の勉強をやめてしまうなんてことは、絶対に、ダメだ。
「なんでこんなことになっている?」
努めて冷静に聞こえるように言葉を選んだからか、葉山もどうやら少しは落ち着いたらしい。俺の背負ってきたリュックサックを顎でしゃくった。
「……おまえ、どうせパソコン持って来てるんだろ。共有してるクラウドのデータ見てみろよ、なんで俺がこうなったかわかるから」
葉山は血走った目で俺を睨んだ。興奮か恐怖かで、体が震えているように見える。
言われるがままにノートパソコンを取り出してローテーブルの上に置き、共有クラウドのフォルダを開いた。途端に出てくる『修正後』と名付けられたデータが、何百と並んでいるのがサムネイルからわかる。全部真ん中に、キャップの男が写っている。
それが——スクロールしていくうちに写っているものが変化していくのがわかった。
最後の方は、全てが黒く塗りつぶされたようなデータの羅列ばかりが残っている。
葉山が喚いた。
「顔の表情もどんどん変わってくるんだ。どんどんどんどん、目つきが鋭くなって迫ってくる。どんどん迫ってくるんだよ。〝アレ〟が!」
俺は、このままだと本当に取り返しがつかないことになるとわかった。
たぶん、そのうち鏡だとか、夜の窓を見てもダメになるんだろうとも。
なぜなら、葉山が見ているのはおそらく自分の顔だから。
真っ黒の画面に映り込んだ自分自身に怯えているからだ。
そう思った途端。部屋の灯りが明滅する。
葉山が「来た」と慄き震えだした。
ジジッ、と、死にかけのセミの鳴き声のような耳障りな音と共にパソコンのモニターにノイズが走って、真っ黒い画面になった。
葉山は「見ろよ。映ってるだろ?!」と叫び、俺の方に画面を押し付けた。画面の中に、俺でも葉山でもない、人影のようなぼやけた何かが揺らめきながらぼうっと浮かびるのを見て、俺は
『ドッペルゲンガーを二回見ると目撃者も死ぬらしいよ』
理解するや否や冷や汗が全身から吹き出す。
これは、葉山のドッペルゲンガーだ。
だけど葉山はモニターに映るのが自分のドッペルゲンガーだと気づいてない。
その僅かな認識の齟齬が葉山を生かしている。
だが俺は違う。月浪に聞いてドッペルゲンガーがドッペルゲンガーであることを知っている。
写真越しに見るのはカウントしない。本当か? モニター越しならどうだ? 何がセーフでどれがアウトなんだ?
だんだんとぼやけた像のピントがあっていくのに、どうしてか目が離せない。
回転する思考の影に、笑う月浪縁の顔が見えた気がした。
こちらをからかうチェシャ猫のような笑み。
『芦屋くん、なにボーっとしてるの?』
その声に我に返って、俺は咄嗟にノートパソコンの画面を叩きつけるようにして閉じた。
息の仕方を思い出したように、深く息を吸って、吐く。
確かにボーッとしている場合ではなかった。ひとまずこれで対処できたはずだ。顔を上げると、呆気にとられた様子の葉山と目があった。
瞬間、ピンポーン、とドアチャイムの音が鳴る。
モニターを確認しようとして俺は「ダメだ」と直感する。
いまこの部屋で液晶の類を見てはいけない。当然、葉山にも任せられない。
「俺が出る。いいな?」
葉山の返事を待たずに俺は玄関まで行った。
扉一枚挟んだ先にいる誰かを確認するためにドアスコープを使う勇気はなくて、仕方なく
「誰だ?」と尋ねる。
「こんばんは、月浪縁です」
知った人間の声に安心して力が抜けそうになったが、ここであっさりドアを開けてお陀仏の可能性を排除できなかった俺は
「おまえ本当に月浪か?」と口走っていた。
しばらくの間をおいて、含み笑いの声が聞こえた。
「ずいぶん疑心暗鬼じゃないか芦屋くん。……まあ気持ちはわかるよ。よっぽど怖い目に遭ったんでしょ?」
「じゃあおまえ、俺がなんで警戒するかもわかってるよな?」
なんで月浪がここにいるのかとか、聞きたいことは山ほどあるが、とにかく扉を挟んでそこにいる〝おまえ〟がドッペルゲンガーでないことを証明してほしい。
俺の要求に月浪は少し間をおいて答えた。
「そうだな。今日の私は黒い半袖のブラウスにブロックチェックのフレアスカート、サンダルを合わせたコーディネートなんだけど、葉山くんと同じ格好だろうか」
「全然違いますけど!?」
思わず敬語で即答してしまった。とりあえず月浪が葉山のくたびれた紺のスウェット姿とも、あるいは俺のカーキのTシャツとデニムとも似ても似つかない格好なのは理解した。
「じゃ、鍵を開けてくれよ芦屋くん。私がドアを開けるから。そしたら下から順に姿を確認すればいい。手に武器を持つなりすればもっと安心できるかな?」
俺は月浪のアドバイスに従う。
鍵を開けてすぐ、玄関の取手にぶら下がっていたビニール傘を拝借して竹刀の代わりに、何年かぶりに構える。目線を下にする。
軋む音が響いて、扉が、開いた。
サンダル……サンダル……と心の中で唱えながら、実際華奢なつくりの黒いサンダルを目にするとどっと安堵が全身に広がった。
顔を上げると、自己申告通りの装いの月浪縁が、疲れた俺を笑っている。
「改めましてこんばんは、月浪です」
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