第10話 私達、本当に付き合ってるの?

アニカがザンドラと話していた頃、ゾニアがウルフを手招きして部屋の隅で小声で話していた。


「ウルフ、アニカと何話してたの?」


「お、お嬢さんと付き合うことになりました。今度、お、お、お父様にも挨拶させてくださいっ!」


「まだ『お父様』じゃないでしょ。結婚するわけじゃないから、挨拶はまだいいわよ。急にボーイフレンドを連れて行ったら、夫も息子もショックを受けるし」


ウルフは何気に『結婚するわけじゃないから』というのが2人の仲が認められないのかとショックだった。


「ああ、そう。今は昔と違って婚前の貞操とかうるさくないけど、うちは違うからね。とにかく大事にここまで育ててきた娘なの。傷つけてほしくない」


「も、もちろんです」


えっち関係に興味津々になりつつある年頃のウルフとしては、生殺しだったけど、2人の仲を認めてもらうには仕方ないし、何よりアニカを大事にしたかった。


それから3ヶ月、学校と宿題、テストの準備、孤児院の仕事の手伝いと、ウルフにはデートする時間なんて全くなかった。それに奨学金を節約してお小遣いをとってあるけど、アニカが満足しそうなデートには全然足りない。


アニカはお金持ちの子ばかり通っている学校に行っているから、そんなことにちゃんと気付いていなかった。


(本当に私達って付き合ってるのかな?会うのは孤児院だけで、しかも2人きりじゃない。デートもしてないし、手もつないでないし、キ、キスだって告白の時だけ!)


不満が高まって、次に孤児院に行った時にアニカはウルフをつい無視してしまった。

その時のウルフの傷ついた顔がアニカにはショックだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る