第27話 戻ってきた手紙

ゾフィーが結局何の収穫もなく買い物から帰った時、ラルフは既に帰宅していた。


「ラルフ、今日は会合の後、どこかに寄った?」


「ああ、会合の帰りに昔の知り合いにばったり会ってカフェで少し話したよ」


その知り合いが実は女性で、どんな関係なのか、ラルフが言いたくないように見えてしまい、ゾフィーはそれ以上問いただせなくて胸のもやもや感がおさまらなかった。

それから数週間経ったある日、ラルフは未開封で返送されてきた手紙を執事のコンスタンティンから受け取った。


「どうして未開封で返ってきたんだろう?」


「聖グィネヴィア修道院の修道女宛ですよね?差出人は若旦那様のお名前で出しましたよね?」


「もちろん。それが何か問題?」


修道女だけで運営されている聖グィネヴィア修道院は、戒律が厳しいことで有名で、離婚した女性など、訳ありの女性を受け入れることでも知られていた。家庭内暴力を受けた女性も保護しているので、男性はたとえ家族親族でも面会禁止、家族親族でなければ手紙での連絡も受け付けないと徹底している。だからコンスタンティンは、男性が差出人だったので手紙が戻ってきたのではと推測していた。


「えっ、親族以外の男性からだと手紙すら取り次がないのか!」


「それが俗界から遮断されて神に仕える厳しさなのでしょうね」


「何だか納得いかないなぁ」


「もしまだ手紙をその修道女にお届けしたいのなら、若奥様に手紙の差出人になっていただいて若旦那様の手紙を同封する形にしたらどうでしょうか?」


ラルフはコンスタンティンの提案を受け入れて早速ゾフィーに相談した。


「ゾフィー、聖グィネヴィア修道院のシスターアントニアに手紙を出してほしい。僕が出した手紙が戻ってきたんだけど、コンスタンティンは差出人が男性だからだろうって言うんだ。だから君が差出人になって僕の手紙を同封する形にすれば、彼女に届くかなと思って」


「ええ、できますわ・・・」


その修道女とはどんな関係だったのかとはっきりとは聞きづらくてゾフィーは口ごもってしまった。

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