第14話 兄弟
ラルフは帰宅してすぐ兄ゴットフリートに公爵家の養子になる話が来ていることを話した。驚いたことに既に兄には公爵家から打診が来ていた。
自分が公爵家の養子になったら今までのように家計を支えることができなくなるから、外の世界に出て働いてほしいとラルフはゴットフリートを説得した。今まではそういう話は腫物に触るように避けていたが、もうそんなことは言っていられなかった。ゴットフリートにもその覚悟がもうでき始めていたようだった。
ノスティツ家には領地がないので、現金収入を得るにはどこかで働くしかない。ゴットフリートがまだ騎士になりたい気持ちを持っているなら、厳しい道だがコーブルク公爵家で公爵家私設騎士団の従騎士から始められる。公爵がゴットフリートをいきなり騎士にすることも無理ではないが、長年訓練してこなかった彼が従騎士を飛ばして騎士になっても実力主義の騎士団では針の筵になるから、その選択肢はなかった。
それか、ゴットフリートが子爵家の采配に役立つ仕事を覚えたければ、コーブルク公爵家で家令見習いもできる。それも嫌なら、ラルフの下級官吏の仕事を引き継ぐこともできる。選ぶのはどれなのか、決定権はゴットフリート自身に委ねられた。
「従騎士は、もうこの年齢では勘弁してほしいし、弟に忠誠を誓うのは抵抗がある。公爵家の家令見習いは悪くないけど、やはりお前と主従関係になるのは嫌だ」
「養子になってすぐに僕が当主になるわけじゃないよ?」
「それでもお前が主人筋になることは確かだろう?」
公爵家の仕事ではなく、ラルフの王宮での仕事を引き継げるならゴットフリートも納得できるようだった。王宮の官吏職は、本来なら試験を受けて就職するのだが、貴族にありがちなコネで就職する人もいる。だから公爵家の権力を使えば、下級官吏の仕事1人分ぐらいどうにでもなるという話だった。最もラルフは下級とはいえ、実力で職をもぎとった。
「じゃあ、兄上、公爵家の力を使って僕の仕事を引き継がせてもらうのが一番いいんだね?わかっていると思うけど、職場で四面楚歌になるかもれないよ?下級官吏職に公爵家のコネ使う人なんていないから。兄上が公爵家で仕事するなら、僕だって多少かばえることもあるだろうけど、僕が辞めた後は王宮の今の職場で何かあっても助けられない。覚悟できている?」
ゴットフリートは、長い引きこもり生活の直後に正攻法で下級官吏試験を受けて受かる自信はなかった。だから公爵家で弟を主人として仕えるよりは、たとえ四面楚歌をくらっても公爵家のコネを使って下級官吏になるほうがいいと腹をくくった。
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