最高の花火

kitchenKZ

第1話 お変露さん


お遍路さん。四国でお遍路巡りをしてた頃の話


当時俺は引き籠りだった。

外へ出るのが辛かった。

16 歳からダンスをしていてダンスの練習中にヤンキーに絡まれて前歯が欠けた。

鏡を見る度に思い出す。

かっこつけて一発殴らせてやるなんて言った自分のアホ面を。


外に出ると誰かに絡まれるんじゃないか


外に出たら俺を嘲笑うんじゃないか


親元で一生暮らせばいいか?未来の事なんて見えなかった。


そんな俺も何か変えたくて、四国へと行くことにした。なんで四国かなんて、そんなの思考でなんとなく、だ。


お遍路さん。人生で一度はやってみたかった。

だから行った。親に金借りて親の金で。



道を歩く。

そんな自然な行動も考えて、考えて、考えながら歩いた。いつも考えた。

考えてると体が鈍った。上手く歩けなかった


馬鹿な考え。他人が自分をどう思ってるかなんて


俺は俺で良いなんて自己肯定感なんて無かった。


それでも道を歩いた。何も自分じゃ見えなくて

笑われて、貶されて、


自分で感じたらそれは全部本当の事だ。

世界は自己中に出来ていた。


知らない人から優しくされて


怖い人から荷物を盗まれた



四国にはお遍路さん用に無料で泊まれる宿泊施設や寺なんかがある。浮浪者が多い、解剖実験用の死体が困らないなんて話も聞いた。本当かは知らんが。


ある日1つの宿泊施設に泊まらせて頂いた。

夏の日だ。

住職がやってる小さな部屋に泊まった。


そこの坊さんが今日は花火があるから見に行こうなんつって俺に言った。



俺はキョロ充になりながらも群衆の中を進んで坊さんと一緒に1番前の席に座った。


1等席。俺の目の前には暗い空間、夜の闇しか見えない。後ろには沢山の観衆。


花火が上がった



物凄い爆音と眩しすぎる花火の色。


肩がビクつき鼓膜も視界も壊れるかと思った


隣では坊主が1等席やっ、捨てて行ったらええ、なんつってた


俺はキョドりながらも花火を楽しんだ振りをした。




あれから20年以上経って振り返る。


あの時見た景色を今も思い出す。音デカすぎの眩しすぎだから、と。


坊さんの横顔も思い返す。俺は何を捨てて何を拾ったのかなと。


今を楽しまないと自由に歩けない


歩けたのは他人のおかげだ


捨てたのは虚栄心


今生きてる瞬間瞬間が最後の花火なんだって


自分が死んでも誰かの心の闇を照らせたならそうゆう事なんだろう。


最高の言葉をくれたあなた達に感謝を

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