先祖還り

バブみ道日丿宮組

お題:黒い耳 制限時間:15分

 侵食がはじまったのは年明け。

 なんかかゆいなっていうどうでもいいようなきっかけだ。

 私は長髪のため耳をちゃんと確認することがなかったわけではないが、とくにそこに視線を向けることはなかった。

 髪をちょっと整えてもらおうと、美容室に3月の終わり頃向かった。

 そこで店員さんが『これ外せますか?』と聞いてきたんだ。

 いったいなんのことだろうかと姿見を見ると、黒くて細長い耳が私に生えてた。

 大きな声が出たわけじゃないが、困惑の色は出た。

 触って確認しても、触覚はあった。

 色々考えた結果、髪の毛は整えてもらおうと『外せないこと』を告げた。よく落ち着いていられたものだと感心してしまうくらいには、平常心だった。

 家に戻り、再度確認。

 生えてる。

 ファンタジーでよくみるエルフ耳が。

 洗面所には当然私以外もくるので、母が『先祖還りね』と。

『初耳なんだけど』と言葉を返せば、話しことなかったねと返ってくる。

 居間に移動し、母から詳しく話を聞く。

 どうやら祖先は転生してきた異世界人(エルフ)だったらしい。

 私のようにエルフ耳が生えたり、不思議な力に目覚めたりは、結構起こってるとのこと。

 髪の毛が日本人なのに、地毛が黄色なのはそういったことらしい。

 それはいいとして、なぜ急に変化したのか。

 私は普通の耳を持ってたはず。耳はほとんど成長しないと思う。

『生命力が輝く時に、進化をする』

 これまた不思議なことを母はいった。

 そして自分が若い頃の写真を見せてくれた。

 そこには私と同じエルフ耳の母が写ってた。

 でも、今は普通の耳だ。

 そのままっていう人もいるし、戻る人もいるらしい。

 うーん、原因が原因だけど、謎現象だ。

 祖先に例えエルフの血が混ざっていようと、耳は変形するものだろうか。

 そこらへんは母もわからないとのこと。

 なんにしてもこれで学校に通ってたと思うと、ちょっとぞくりとした。

『あいつ痛くね?』とか思われたかもしれない。

 収まるかはわからないけれど、耳がでないようにしようと私は決意した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先祖還り バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る