松ぼっくり(12/1)




 少し疲れたのよね。

 姫が零した弱音は至極当然だった。

 ここ最近多忙を極めていたのだ。

 だから、僕は。

 姫の願いを叶えた。


 ちょっとだけ長い眠りを姫にあげたかった。

 眠れなくなった姫の為に。


 けれどまさかこんなに長くなるなんて。











「さあ、本日十二月一日は何をする日でしょうか?」

「………」

「あらあらあ~ら。反応が悪いわね~。しょーがない。私が代わりに答えてあげる。じゃんじゃかじゃーん。今日は松ぼっくりを拾いに行きます!」

「姫様」

「な~に?」

「まだ目覚めるつもりはないのですか?」

「うん!」


 はいはい早く行くよ。

 守護者は手を握って走り出す姫を追い越さないように歩きながら後を追った。

 小さくて背筋が伸びるその背中を見つめながら。

 深くて濃い青い髪がたなびく様を見つめながら。


「クリスマスツリーか、クリスマスリースに飾るかは。まあ、拾い終わってから決めようね!」

「貴方の髪飾りでもいいのではないですか?」

「それいい!」


 ぴょんぴょん跳ねて進むおかげで離れそうな手に少しだけ力を強めて握った。




 ここでくらい、離れないでください。











(2022.12.1)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る