第138話 魔大陸の七大迷宮






「な!? 本当ニ攻略してくるトハ……」


 俺たちはアルシア山の麓の町からキキの住んでいる町へと戻ってきた。

 そこで親父さんに討伐証明としてリトルベヒーモスのドロップアイテム、クソデカい角を見せている。


「地下百階層は超えると言われていル大型迷宮ヲこんなに短期間デ……」


 親父さんが呆けた顔でゴニョゴニョと呟いている。


「こうへいサン! ……すごく、大きいデス!」


 キキがうっとりとしながらクソデカい角を見ていた。


「くっ! 何か……そう! 何かのインチキをしたニ違いナイ! そうだろウ!?」


 親父さんが頭を両手で掻きむしりながら言ってきた。


「えっと……まぁ、実際は最下層だけ攻略してきたんですが……」


 俺はポリポリと頬を掻きながら、語尾を小さくしつつも言う。


「なニ? つまりは……不正だナ!? これは不正! お義父さんは認めまセン!」


 いやいや、お義父さんって言っちゃってるし……。


「これハあれだナ! 課題のやり直しを請求すル!」


 フンスフンスと鼻息も荒く、のたまう親父さん。

 ええ……。やり直しかよー。

 キキをちらりと見ると目をキラキラさせて俺のことを見ている。


「えっと……やり直しするにしても次はどうすればいいんですかね?」


 俺が疑問に思って尋ねる。


「うム! そうだナ! 七大迷宮を踏破したラ認めようじゃないカ! すでに一ツ、百鬼迷宮を短時間で踏破しているのダ。簡単だろウ?」


 親父さんが腕を組んでニヤリと口角を上げながら言った。

 ええ……。

 あと六つもあるのかよ……。


「良いですね、マスター。この際です、魔大陸のダンジョンを掌握しましょう」


 どの際だよ!

 ティファが真顔でとんでもない事を言う。


「ふむ。噂に名高い魔大陸の七大迷宮か。不足は無いぞ? コウヘイ」


「婿殿、次は不覚を取らないようにしよう!」


「あい!」


「ボクも頑張らなきゃ!」


「お姉ちゃんは潜りませんよー? 道案内くらいなら良いけどー」


 約一名やる気が無いが、他は大丈夫なようだ。


「こうへいサン、こうへいサン。キキにも……その……アレを下さいませんか?」


 キキがモジモジ、チラチラと俺を見ながら言ってきた。

 アレってなに!?


「んん!? キキはいったい何が欲しいんだ?」


「皆もそれぞれ、こうへいサンから贈ってもらったとキキは聞きました! さあ!」


 いや、さあ! じゃないよ。ちゃんと説明プリーズ!


「んで、その答えは?」


「ンもう! ……指輪ですっ!」


 キキが何で分かんないの!? と言わんばかりだ。

プンプンという擬音語が聞こえてきそうだ。


「あ~。指輪かぁ……え? 俺がはめるの!?」


 キキが左手の薬指を俺にズイッと差し出してくる。

 俺は霧夢の腕輪の中身を急いで物色した。


 お!? あったあった。

 俺は霧夢の腕輪からインペリアルトパーズの指輪を取り出し、キキの左手の薬指にはめこんだ。


 シュルリとサイズを変えて、ピタッとはまる指輪。

 さすがダンジョン産だな。


「でへへ……」


 キキが右手を頬にあて、だらしない顔で左手の指輪を見ている。

 ちょっと不気味だ。


「ぐぬぬヌ……」


 親父さんが血涙を流して俺たちの様子を見ていた。


「と、とにかく、七大迷宮を踏破ダっ! 話はそれからダ!」


 腕を組み、そっぽを向いて親父さんが言う。


「分かりました。……それで次の迷宮ってどこなんでしょう?」


 俺が尋ねると、


「むウ……次は船ダ! この時期、岸に近づいてくる船のダンジョンがあル。そこダ!」


 親父さんが言うには、季節モノで暑い時期に海からやって来る大型の船の形をしたダンジョンがやって来るのだと言う。

 そこへ行って踏破して来い、と言う訳だ。


「海かぁ。海だと俺の力が効きづらいんだよなー」


 俺がボソッとぼやく。


「なんダ! 怖気づいたのカ! 今なら取りやめてもいいゾ!」


 おれのボヤキを親父さんがピクリと聞き止め、そんな事を言った。

 そのやり取りを見ていたキキの顔が悲しみに染まっていく。


 ! 

「いや! やってやりますよ、俺は!」


 俺の意気込みを聞いてパアッと顔を綻ばせるキキ。

 俺たちは謎の回遊船に挑むことになった。




「じゃあ終わったらこの笛でお姉ちゃんを呼びなさいね~」


 抱っこ紐を首から下げたエウリフィアからゴツゴツした縦笛を渡される。

 何から作っているんだ? この笛。

 俺はいぶかしく思いながらも笛をエウリフィアから受け取った。


 エウリフィアは抱っこ紐の中のヴェルとアウラをあやす。

ルンも抱っこ紐の中に入っていた。


 俺たちは今、ボロボロの様相の船の甲板に立っている。

 まるで幽霊船だ。


 帆は所々破れており、甲板も穴が開いている場所がある。

 後方の船橋には操舵室があり、ここも穴が空いていたりする。

 時折、独りでにカラカラと回るかじの音を聞きながら奥に入ると、鈍く輝く転移石が設置してあった。


「マスター、少々お待ち下さい」


 ティファがそう言うと転移石に触れ、目をつぶる。


「最下層手前の階層に飛べそうです。マスター」


「そうか。じゃあそこまで皆で行こうか」


 俺がそう言うと、キョロキョロと辺りを見回していた皆がティファの周りに集まった。


「三十九階層へ、転移」


 皆がティファに触れるのを確認すると、ティファが呟く。

 一瞬の浮遊感を覚えると、辺りの景色がガラッと変わっていた。






――――――――――――


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