第129話 ハンバーガーセットと酒蔵
「お? こんなのもあったのか……」
俺は今、ダンジョンの機能を確かめていた。
最初にミーシャに相談してドン引きされて以来、自ら開いていなかったダンジョンのウインドウだ。
最近、ダンジョン絡みの事件が多いので自分でも確認しよう! と思い至ったのである。
色々機能があって正直、全部は把握しきれん!
だがしかし、俺が目に留めた項目があった。
食材だ。
なんと!元の世界の食材がある程度とは言え、召喚できるみたいなのだ!
メックドナルドのハンバーガーとかコム・コーラなどもあった。
どれどれ久しぶりに食ってみるか、とダンジョンポイントを使って召喚してみる。
ブウン
魔法陣から浮かび上がったのは、ハンバーガーとフライドポテトのセットだ。
まずはコーラを……一口ストローで飲み込む。
っくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!
コレコレ! 久しぶり過ぎて喉に来るぜ。
若干、涙目になりながらもコーラの余韻を楽しんでいると、目が合った。
口元で人差し指を加えて俺をほへぇっと眺める幼女が居た。
ノーナだった。
頭にスライムのルンを乗っけていて、アホ毛が潰れている。
「コーへ、何してる?」
ノーナが尋ねてくる。
う……皆に隠れてつまみ食いを……違うんだ! ちょっと魔が差しただけなんです!
「うん。ノーナはお利口さんだから、これをやろう」
ブウン
俺はもう一つハンバーガーとポテトのセットを召喚する。
「くんくん、いい匂い。コーへ、のーなも食べていい?」
「ああ、みんなにはナイショダヨ?」
ノーナがハンバーガーの紙の包みに手間取りながらも開く。
「やわらかくておいしい! です!」
うんうん。たまに食うのが良いんだよな。
「なにやら良い匂いがします。お姉ちゃんにもそれをよこしなさい!」
そこへ、クンクンと鼻を鳴らしながら入ってくるエウリフィア。
ヴェルとアウラを胸に抱いている。
「あい。いい子にしていないともらえないのです!」
口元に食べかすをつけたノーナがえっへん! としながら言う。
「お姉ちゃんはいい子でしょう? キミもそう思いますよね? ね?」
なんかもう必死なのでエウリフィアにも出してやることにした。
ブウン
「はい、エウリフィアこれ。」
「お姉ちゃん、もしくはフィアちゃん」
「?」
「もう! お姉ちゃんかフィアちゃんと呼ぶのです!」
「じゃあ、フィアで。いらないのか?」
「いります! もうキミは意地悪なんですから」
片手にヴェルとアウラを抱きながらあむっとハンバーガーに食らいつくエウリフィア。
「!」
~~~ッ!
エウリフィアは一口食べると驚き、はぐはぐとハンバーガーを食べる。
フライドポテトにも手を伸ばして、コーラで流し込む。
「っくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
目に涙をためてニンマリと微笑むエウリフィア。
ノーナもフライドポテトを小動物のように食べている。
ノーナの頭の上のルンが体を伸ばしてコーラを吸い上げる。
するとルンの体のあちこちが爆ぜるように伸び縮みする。
ははっ。パチパチするってか?
「コーへ。またいつか出してくれる?」
「ああ、いい子にしてたらな」
俺はノーナの頭を撫でてやった。
「その時はお姉ちゃんも呼ぶのですよ?」
あっという間に食べ終わったエウリフィアも便乗してきたのだった。
「あーーーーーっ! もう我慢できなーーーーーい!」
そう叫ぶのはクーデリアだった。
どうしたどうした? と俺がクーデリアの部屋を覗く。
おっと、変態じゃないぜ? 扉が開いていて隙間から声が聞こえてきたんだ。
「あ! コウヘイさん! 丁度いいところに!」
パタパタと小柄なクーデリアが駆けてくる。
「んあ? どうしたクー」
「コウヘイさん! ここには! お酒が! 少ないです!」
最近しっとりツヤツヤになった髪を揺らしてクーデリアが言う。
まぁ確かに? ウチでは酒を飲む奴は少ないよなぁ。
「なので! 酒蔵を! 作ります!」
なんだってー!?
いや、まぁ作るのは構わないが、誰が酒の面倒を見るんだ?
「クーが酒の管理をするのか?」
「はい、ボクがやります!」
鼻息も荒くクーデリアが返事をする。
ドワーフの中でもそれほど酒を飲まないクーデリアでも、この森の酒事情は我慢できなかったようだ。
「じゃあ、サクッと作っちまうか!」
「はい!」
ということで俺たちは家の外に出る。
「場所はどうする? 倉庫の隣でいいか?」
「はい、コウヘイさん。地下室も欲しいです」
俺は倉庫の隣の地面を大地の力で掘り下げ、まず地下室を作った。
その次に地上階に当たる部分を形成していく。
底が抜けないように頑丈にね。
アイン達に手伝ってもらい、木の集積場から木材を運んできてもらう。
それを大地の力で形を変えながら組み付けていくと酒蔵の完成だ!
「どうだ? クー。こんなもので大丈夫か?」
「はい、コウヘイさん。相変わらず凄いですね。あっという間に出来上がりました!」
その後もクーデリアに言われるがままに、酒樽やその他の物も作った。
「コウヘイさん。今度ブドウなんかも育ててくれませんか? それでワインを作るのです」
「おう、分かった」
こうしてクーデリアの酒蔵が完成したのであった。
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