第116話 ゴブリンキング






 ズアッと黒い渦のような物がオーガキングの側に現れる。

 黒い渦は人ほどの大きさになると中から誰かが出てきた。


 金髪でロン毛の兄ちゃんだ。肌は黒い。

 ぱっと見は人相が悪そうに見えるがイケメンだ。


「結構うまくいってたんだけどなぁ……」


 黒い渦から現れたイケメンの男が手を振るうとオーガキングの口元の周りの水が弾けて消える。


「グ……ガ……ザオ“ル”……」


 オーガキングが黒い渦から出てきた男に濁った声をかける。


 オーガキングは喋れたのか!

 俺は見当違いな事を考えながらもオーガキングの拘束を続ける。

 ぐっ。そろそろきついぞ!?


「サオル様だろうが! まぁいい。所詮はちょっと頭のいいオーガに過ぎない」


 イケメンの男、もといサオルは懐をゴソゴソとまさぐると何かの試験管の様な物を取り出した。


「コイツを使えば……おっと結構きついな、この重力魔法」


 魔法じゃないんだけどねっ。

 サオルは重力が増しているゾーンの中、手を伸ばしていってオーガキングの口元に試験管を持っていった。


「ほれ。飲み込め。オーガよ」


 キングオーガが試験管の中身を飲み干した。


「グガガガガガガガガガガガガ……」


 メキメキ、バキボキと筋肉と骨の鳴る音が響いてきたと思ったら、オーガキングの体が変貌していく!

 二本の角の間から更に角が生え、折り切られた角も再生し、金級冒険者につけられた傷も回復していく!


 オーガキングの赤い肌が黒く染まっていった。

 目の色も金色の目から黒っぽい紫色へと変わる。


 くっそ、もうキツイ!


 俺の意識が途切れる前に通した鑑定には、こう映っていた。


 ~~~~~

 ケイオスオーガ

 邪神の眷属

 ~~~~~





 ヒュン ボグッ ザシュ


「次からぁ次ですぅ」

「ですです!」

「アタシの矢が無くなりそうなんだぜ!」


 エミリーが倒れたゴブリンから矢を回収している。

 三人娘たちは見張り場から最前線に配置されていた。

 三人の連携は中々のもので危なげなくゴブリンを倒している。


 ガッ

 ゴーレムのドライが前に出てゴブリンの攻撃を引き付ける。


 ヒュガッ ボガッ ザンッ

 その隙に三人娘たちがゴブリンに攻撃だ。


「ドライちゃんん、ナイスですぅ」

「です」

「ドライがいるとサクサク倒せるな!」


 森の奥から次々と現れるゴブリンたち。

 それを鉄級の冒険者たちが捌いていく。


 ミョンミョン

 エミリーの頭の上でスライムのルンが上下に伸び縮み。


「ルンちゃんもぉ戦いたいんですかぁ?」

「ですです?」

「ははっ。ごきげんだな!ルン」


 ドヒュッ ボガン ザシュッ


 ドライがタンク役となり、ゴブリンを受け止める。

 それを三人娘が叩く。

 この繰り返しでゴブリンを殲滅していった。



「キングが出たぞっ!」


「何っ!?」


「キングは銅級の担当だろうが!」


「知らねぇよぉ!」


 鉄級冒険者たちが浮足立つ。


「ギャギャギャギャギャギャ!」


 ズドン!


「うわあああ!」


 森の奥からゴブリンキングが現れ、鉄級冒険者たちをぶっ飛ばしていく。

 散り散りになる鉄級冒険者たち。


「わぁ、大変ですぅ」

「ですです」

「おわ! なんかこっちに来るぞ!」


 ザッ ドッ!


「ギャギャギャ!」


 ゴブリンキングの体当たりをドライが受け止める!


 ヒュガッ ドッ キンッ

 半ばルーチンと化していたのもあって、ゴブリンキングに的確に攻撃する三人娘。


「グギャアアアアアアアアアアア!!」


 エミリーのはなった矢がゴブリンキングの片目に当たる!

 マロンとリィナの攻撃は防御された! しかし多少のダメージにはなったようだ。


「当たったですぅ」

「防がれた、です!」

「よっしゃ! 目をもらったぜ!」


 ミョンミョン

 ルンもエミリーの頭の上で伸び縮み。


「グルギャッ!」


 ゴブリンキングがエミリーに向かって来る!


 ズガッ

 ドライがそれを阻止。行く手を阻む。


 ドヒュッ ボグッ ザン


「グギャギャギャ!」


 三人娘たちの攻撃が通る!


 ズザッ

 ゴブリンキングは後方に跳んだ。


 しばし、にらみ合いが続く。

 ゴブリンキングは何かをゴニョゴニョとつぶやいた。


 ゴアッ

 大きな火の玉が三人娘たちを襲う。


 ザッ ズアッ

 ドライがアダマンタイトのガントレットの腕を振るい、火の玉が散らされる。


「魔法ですぅ」

「ですです!」

「おわっ! あちちち!」


 飛び火したエミリーが手を振って火を消す。

 そのエミリーの頭の上でルンがミョンミョンと上下運動。


 ゴアッ ゴアッ ゴアッ


 ヒュバッ ヒュバッ ヒュバッ


 ゴブリンキングの連続火魔法をドライがさばく!


 ルンがエミリーの頭の上から飛び降りると、ゴブリンキングの死角に回った。


 ゴアッ ゴアッ ガブッ!

 ルンがゴブリンキングの口元を覆うように飛びつく!


「今ですぅ!」

「です」

「おっしゃ!行くぜ!」


 ドライと三人娘が前に駆け出す!


 ドッ


「です!」


 まず、一番小柄なリィナがゴブリンキングにシールドバッシュを決める!

 そこへ反対側からドライが駆けより、アダマンタイトのガントレットを装備した腕で連続突きを放った。


 ズドドドドドドドドドドドドドドドドンッ!


「お、お、お、お、重い! ですー!」

「リィナがまずいんだぜ! マロン!」

「はぁい、ですぅ」


 マロンがリィナを後ろから支える。

 ドライの連続突きが終わる頃には、ボロボロになったゴブリンキングが倒れ伏していた。


「やったぜ!」


 喜ぶエミリー。

 いつの間にかエミリーの頭の上に戻ったルンもミョンミョン。


 そこへ、


「……エミリー? マロンはぁ、重くないですからねぇ?」


「う、……だぜ?」


「ね?」


 ニコニコと、しかしいつもとは様相が違うマロンが言うのであった。






――――――――――――


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