第115話 オーガキング






「よしよしよーし」


 ザンッ ザシュッ ザシュ

 足を固められたオーガを金級の冒険者が屠っていく。


 ゼフィちゃんは精霊魔法でマリンちゃんを呼び出し、オーガの口周りに水を発生させているようだ。


 ヒュガッ

 アルカが大地の剛弓で魔力矢を放って援護している。


 ティファも氷の魔術を使っていた。


 俺は前へと向き直った。


 ズン! ドスン! バキバキ!

 森の奥からオーガの群れが次々とやって来る。


 俺は目に映るオーガを手当たり次第にその足を凍らせていった。


 ヒュガッ ドヒュッ バキン バキィン


 ザンッ ザシュッ


「いいねぇ~。効率が段違いだぜっ」


 金級の冒険者が上機嫌でそう言った。



 ろくに休憩も取れないままオーガの襲撃を迎え撃つ。


「コレは本当に引っ切り無しだな」


 俺は氷の魔術を放ちながらぼやく。

 なんせ途切れないもんだから、オーガのむくろが辺りに積み重なっていく。

 回収班も入って来られないのだ。


 そんな時だ。

 空からヤツが現れたのは。



 ヒューーーーーーーッ ズドオオオオオオオオオオオオオオオン!


 両腕を叩きつけるようにして上空から一回りは大きいオーガが降ってきた。

 俺が異世界に来たときほどではないが辺りにクレーターを作ってオーガのむくろを吹き飛ばした。


 様子の違うオーガに俺は鑑定を通す。


 ~~~~~

 オーガキング

 魔王種

 ~~~~~


 出た!

 コイツがオーガのスタンピードの原因か!

 それに魔王種って?

 この世界には魔王なんてものがいるのか?


「キングが出たぞ!」

「なに!? コイツがキングか!」

「コイツを倒せばここらは収束するな」


 金級の冒険者たちは余裕そうな顔で口々に言い合う。


―そう簡単に行けば良いんだけどな。


 俺は一抹の不安を抱えながらも、オーガキングから目を離せないでいた。


「ガアァァァァァァァァァァァッ!」


 クレーターの中からオーガキングが上を向いて叫ぶ!


「早いもの勝ちだぜっ、と」

「あっ、待て!」


 金級の冒険者の一人が我先にとオーガキングに向かう。


 ヒュバッ ズドオオン!


 オーガキングの突き蹴りが金級冒険者に刺さる!


 バキバキバキッ!

 蹴られて吹き飛ばされた冒険者は木々をなぎ倒していく。


「ぐっ……油断した……ぜ」


 ガクリと気絶してしまう金級冒険者。

 あれだけの攻撃を受けて気絶で済んでいるのは、さすがは金級と言えば良いのだろうか?

 彼はあっさりとやられてしまったが、お陰で弛緩していた空気が引き締まった。


「アルスが一撃とはな……コイツ結構やるんじゃないか?」

「ああ、油断しないようにしようか」

「協力してやるしかないな」


 金級冒険者たちはチラッとアイコンタクトを取るとオーガキングの前に展開していく。

 俺たち下級冒険者はただ見ているだけだ。


 ヒュバッ ズガアアン!


 オーガキングの回し蹴りだ。

 盾持ちの冒険者がそれを防ぐ。


「ぐっ。重いっ!」


「取ったっ!」


 横から剣で切りつける冒険者。


 ヒュカッ ヒュンヒュンヒュン ストッ


「ガアアアアアアアアアアアアッ!」


 首をそらしたオーガキングだったが、角を一本切り落とされてしまう。

 キングオーガは怒り狂ったように叫ぶと、自らの角を切り落とした相手に向かう。


「ゴアアアアアアアッ!」


 ヒュドンッ


「ぐっ!」


 ズザザザザザッ!

 蹴られた冒険者は後ろに飛ばされながらも、地面に二本の線を残して踏みとどまる。


「早いし強えぞ、コイツ」


 普通のオーガキングとは違うのだろうか? 金級冒険者が攻めあぐねている。


「脅威度を二段階は上に見積もった方がいい」


 盾を持った冒険者が言う。


「ガアッ!」


 ヒュバッ ドパン!


「おらぁ!」

 冒険者が盾を構えて吠える。


「あなた様、避難したほうがいいのでは?」


「ぬ。アルカちゃんはそう思うか。コウヘイ、何か手はないかの?」


「マスターならイチコロです」


 ビリビリと辺りに響く衝撃に身を潜めながらも俺は何か打開策は無いかと考える。

 足を固める? いや、なんか無理そうだ。

 そう思った時点で多分無理だろう。


 俺の力は大地の力だ。

 大地ってのは……そうだ!


 俺は地面に手をつき、大地の力を流す。

 もっと、そうもっと深くだ!


 俺は胃が捻れ上がるような感覚を覚える。

 汗も吹き出す。


 どうだ!?


 俺は霞む目でオーガキングを睨む。


「グ、グガッ!?」


 オーガキングが中腰になり、何かに耐えている。

 そう。俺が作用させたのは重力。

 大地の引力を強化させたのだ。


 しかし、きっつい!


「ゼ、ゼフィちゃん……今のうちに……ヤツの口を塞げないか?……」


 俺は息も絶え絶えにゼフィちゃんに問いかける。


「む? よし、任せるのじゃ! マリンちゃん!」


 ゼフィちゃんが声をかけるとズワァっと水の塊が広がり、人の形を取る。


「マリンちゃん! あのオーガキングの口と鼻を塞ぐのじゃ!」


 水の精霊は頷くと、手を前に差し出した。


「! グァボァッ」


 オーガキングの口元の周りに歪な水の塊が現れる。


「なんだぁ?」

「うおっ! オーガキングの周りが重たくなっているぞ!」

「これは……重力魔法か!」


 金級冒険者たちが驚きの声を上げる。


―いや、魔術でも魔法でもないんですけどねっ。

 俺は鼻血を出しながらも地面に力を注ぎ続ける。


―まだかっ!?


 俺が霞む視界の中、気をもんでいると、


「おいおい、やられそうになっちまってるじゃねえか」


 そんな声が辺りに響くのだった。






――――――――――――


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