はぐれ魔法使いだけど、大神官様に愛されてる俺

月杜円香

第1話  幸せな俺

「ただいま、リーン」


「おかえり~オルランドさん。長旅ご苦労さん」


 俺は、玄関までオルランドさんを出向えた。

 この温泉の保養地は、魔法陣も無い辺鄙な所だ。大神官であるオルランドさんが、ここへ通って来るのは、もちろん秘密である。


 僕の名前は、ラインハルト・リッヒ。

 19歳。

 銀髪と灰色の瞳を持った男♂だ。


「オイオイ、火を使ってるのですか!?焦げ臭いですよ」


「あっ!!いけね~、若鶏の煮込みを作ってたんだよ。今日あたり、オルランドさんが来そうだって、風が噂してたから」


「流石に、耳が良いですね。でも、釜戸から目を離すなど危ないですよ」


 オルランドさんは、心配そうに言った。


「大丈夫!!大丈夫!!火の精霊に火の番をさせてあるよ」


 僕は、エッヘンと胸を張って見せた。


「また腕を上げましたか!?リーン。それ以上魔法の腕を極めても、神殿所属になれるわけでもないのに……」


 オルランドさんは、悲しそうに言った。

 オルランドさん・・・オルランド・ベーカル34歳の神官だ。


 ヴィスティンの中央神殿に来て、数年で異例の出世をしている人だった。

 34歳だというのに外見は、どう見ても20代だ。

 金髪、碧眼の美しい人である。


 ここはオルランドさんのストレス解消のための保養地で、まとまった休暇が取れた時にオルランドさんはやって来る。


 俺は、この保養地に住み込みで働いていて、オルランドさんの屋敷の管理を任されていた。

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