「ラノベの打ち切りは3日で決まる」マーケティング思考で捉える辛辣コメント
那古野 賢之助
「ラノベの打ち切りは3日で決まる」3日で6割の法則
「ラノベの打ち切りは3日で決まる」
そんな話が突如として目に飛び込んできた。
おいおいあんまりじゃないか、だってそうだろ?みんな頑張って頑張って努力に努力を重ねて、ようやく認められてラノベ作家デビューしたと思ったら、3日で打ち切りって!!あんまりだろ!
大体、某週刊少年紙だってもっと長い目で見てくれるだろ!
だが、現実にそのようなことは起こってしまう。
実際のところ3日で社内的に決定されるということはないだろうと思われるが、3日の売上を見れば打ち切りにすべきか判断できる。遅くとも1週間見れば大体把握できるというのが、マーケティングをしている人なら誰でも想像できるのだ。
3日で打ち切られる理由は2つある。
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理由1 「3日で6割の法則がある」
以前、私が本や映像を販売していた会社でマーケティング担当をしていた時には、初日の売上でおおよそ着地の売上が見えた。つまり初日に何冊売れたか数字が出れば、過去の販売実績から平均的な売上推移が予測できるということだ。
売れる努力をしないわけがないので、売れる努力をしないと、平均的な売上推移にすら届かないという結果になる。
だが、伸びる作品もあったりするのは事実だ。1週間ほど見ていれば平均的な推移よりもなぜか堅調な数字を出しているパターンだ。
さらに、急激に伸びるパターンもある、これはいわゆるバズるというやつだ。このバズるパターンは2つあり人気になって右肩上がりに売上が伸びていくものと、瞬間的に売上が伸びるが数日すると元に戻るものだ。後者は最悪で、変にお金をかけて供給量を増やすと手元に届けられる頃には需要がなくなっている。その場合、赤字だけが残るという地獄を見る。
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理由2:「CPAで管理されている」
これも大きな要因である。3日で打ち切りが決まるにしても何冊売れたら黒字になるかは物によって違う。なぜなら広告に使う費用が違うからだ。
出版している側で本を作るまでにかかった費用と、広告費を足して、場合によっては会社を運営するために必要な固定費を足して、何冊売れたら黒字になるか計算する。ここまでは誰でも想像がつくと思う。
今のウェブ広告ではクリック報酬型広告というものがある。例えばGoogle広告や、TwitterやInstagram、LINEなどで表示されるものだ。この辺りの広告はクリックされた分だけ広告費を支払う仕組みが主流だ。
この場合は、CPAで数字を管理される。Cost Par Actionの略で、本を売ることを例にするならば「本を1冊売るのに何円かかったのか」という数字だ。
1冊700円のラノベを売るのに広告費を1,000円使っていたら、売れば売るほど大赤字だ。今すぐ広告を止めて売るのをやめろ!となる。
発行部数と原価を計算すると、1冊を売るために使える広告費がいくらなのか数字で出すことができる。その費用に見合った数字が出なければ、利益を会社に残すことはできない。
売価700円であれば、おそらく広告に300円かけても赤字だろう、そうなるとGoogleのキーワード広告に出稿するのは赤字確定だ。1クリック10円の広告だったとしても30クリックに1冊売れても赤字ということは、CVR3%以上か。クリック広告は出せないな。 ちなみにTwitter広告で1クリックあたり24円~200円がありがちな費用の相場だ。
すまない。ここまで考えたが、クリック広告はCPAは計算するまでもなく赤字になりそうなので、広告として使えなさそうだ。
そうすると、書店に並んで売れる数と、ネット販売で売れた数で簡単に決まってしまいそうだ。
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そんなわけで3日で打ち切りが決まっていたとしても不思議ではない。むしろ広告費を無駄遣いする前に広告を止めた方が良いという判断になる。
では、そんな非情なマーケティングの世界で、私たちはどう対抗するのかというと、好きなラノベを買い、SNSで話題にするというのが一番良い。自分のフォロワーが少なくて効果があると思えないという人は、Amazonでレビューをするのも良いかもしれない。とにかく、感想を共有し、布教するのだ。学校で話題にしても良い。
熱狂し、話題にし、情報を爆発的に広げていく。好きだという気持ちを伝搬させていくことが、数字で管理されたマーケティングの世界に予想外を叩きつけるために重要だ。
多くの物語と登場人物たちが、より長く生き残り、目指した結末へと辿り着けることを祈る。
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