第二章

暗殺者


 夜、この屋敷には居ないはずの者達が徘徊する。見張りの騎士も、メイドも誰も気づかない。そんな彼らの正体は、とある貴族に雇われたプロの暗殺者だ。依頼内容は魔女の暗殺。相手は魔女とはいえまだ子供。今回も淡々と仕事をこなし、報酬を得て適当な場所で夜を明かす。それが日常だ。そして今日もその何てことない日常になる、はずだった。



なのにこの状況はなんだ。



 一つ瞬きをする度に共に忍び込んだ同僚の首がかっさかばれていく。切り傷がバツになっていることからしておそらく双剣使い。



 我らとて決して弱くはない。プロといわれる実力は持っている。万が一バレても称号持ちを殺すこともできる。なのに、相手の姿すら確認することも許されずにやられていく。いつ自分がやられるのかという恐怖に怯えながらも思考は決断を下す。



「(逃げなければ!!)」



 そう思い撤退しようとするも、

「どこ、いく、の?」


「ヒィッ!」


 押し倒され、首元にナイフをつき立てられる。恐怖に脳が支配されかけた時、瞳に映ったものに衝撃を受ける。


「こ、子供だ、と」


 あり得ない。こんな子供に我々はやられていたと言うのか。そもそもなぜバレた。隠蔽魔法を住員使っていたのに。



 見たところ九歳ぐらい。曇天の空を描く灰色の髪と血の瞳〈ブラッディ・アイ〉が蝋燭の火に揺らめく。



 そこで思い出した。闇の住人達によって、まことしやかに囁かれていた噂を。



『暗殺者を待ち伏せし、殺して周っている奴がいるらしい。どんな実力者でも関係ない。ターゲットにされた者は確実に殺される。年齢、性別、容姿などは見たものが全員殺されているので分からないが、唯一見逃された奴によると灰色の髪だったらしい』



「(まさか、こいつが?)」


 だがここ最近はその噂を聞かなかった。そのため誰かに返り討ちにされたのだと思っていた。なんにせよこんな所で死にたくない。



 そう思い相手を押しのけようとするも、尋常じゃない力がかけられ、動くこともできない。そしてそうこうしている間に・・・



「君、で、最後、だよ。バイ、バイ」


「嫌だ!死にたくな、」



 そうして彼の人生は幕を終ろした。

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