第180話 食事会


「冒険者ギルドマスターからのレッドバジリスクはようかんとチョコレートバーのお礼とのことですわ」


「な、なるほど……」


 方位磁石や浄水器、アルファ米や棒状ラーメンなどの王都の店へ卸す商品とは別にルハイルさんに送ったようかんとチョコレートバーは喜んでもらえたらしい。


 ……そのお礼にレッドバジリスクの肉はさすがにもらいすぎな気もする。前回もらったレッドバジリスクの肉は本当においしかったし、向こうでは高級食材で、王都の物価だととんでもない値段になるんだろうな。


 うん、次回はようかんとチョコレートバーの他に新しく購入できるようになった塩飴や餅なんかも贈るとしよう。


「それじゃあ、いただいたお肉の一部はいつものように燻製にしてお渡ししますね」


「ありがとう、テツヤ!」


「ありがとうございます。あっ、実は今回は別件で近くの街での依頼を受けておりますので、あと一週間後にまたアレフレアの街を訪れてから王都へ戻ります。もし可能でしたら、その際にお願いできますか?」


「はい、もちろんですよ」


 どうやら2人は今週この街の近くの依頼があって、またアレフレアの街へ寄ってから王都へと戻るらしい。


 それなら燻製を作るのは来週のほうがいいか。それにしてもこのアースドラゴンの肉は結構な量だし、アレフレアの街の冒険者ギルドのライザックさんたちや従業員のみんなにおすそ分けしても食べきれるか怪しいところだな……


 そうだ、それならむしろ……


「ベルナさんとフェリーさんは来週もアレフレアの街へ来られるんですよね? 来週のお昼くらいって時間を取れたりします?」


「うん、多分大丈夫」


「ええ、問題ないと思いますよ」


「でしたら、以前にこのお店でやったバーベキューみたいな感じで、またみんなで食事会なんてどうですか? これだけの量のお肉なんでせっかくならみんなで一緒に食べられたらなあと」


 以前に2人と一緒にドルファとアンジュの歓迎会をこの店の庭で開いたことがあった。フェリーさんは少し人見知りするけれど、王都へ行く時はうちのお店の従業員とはずっと一緒だったし、もう普通に話すことができる。


「以前王都へ行く時に河原でやったバーベキューみたいな感じです。誘うのはこの店の従業員とフィアちゃんのお母さん、それと冒険者ギルドのライザックさんとパトリスさん。それと俺の友人の3~4人を誘おうと思っています」


 フィアちゃんのお母さんは前回も参加してくれたし、ライザックさんとパトリスさんは2人も知っている。あと2人が知らないところでいつもお世話になっているロイヤ達3人と鍛冶屋のグレゴさんも誘いたいところかな。


 さすがにこれだけの人数がいれば、テーブル一杯あるこのアースドラゴンの肉も消費できるはずだ。


「ええ、もしよろしければぜひ」


「前のはおいしくてとても楽しかった」


「ありがとうございます。きっとみんなとても喜んでくれますよ」


 よかった、最初にお誘いした時は気乗りしないような感じだったけれど、今回は即答でオッケーしてもらえた。多少はベルナさんとフェリーさんとの付き合いも長くなってきたし、信頼もしてもらえているのだろう。


 さて、そうと決まれば俺もいろいろと準備をしておくとしよう!


 バーベキューや食事会もそうだが、なんだかんだでこういうのは準備をしている期間も楽しいものなのである。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「今日はいい天気で何よりだな、テツヤ!」


「そうだね、リリア。天気だけは俺たちの力じゃどうにもならないから助かったよ」


 無事に1週間のお店の営業を終えて食事会当日となった。そしてありがたいことに今日の天気は見事なまでの快晴だ。こればかりは完全に運次第だったから本当にありがたい。


 アレフレアの街のすぐ近くにある小川のほとりでアウトドアショップの能力によって購入した座り心地のよいアウトドアチェアとテーブルを用意して、日差しを遮る大き目のタープを張って準備はすでに完璧だ。


「おう、テツヤ。今日は誘ってくれてあんがとな」


「テツヤさん、今日はお誘いいただいて本当にありがとうございます」


「ライザックさんもパトリスさんもお忙しいところ参加してくれてありがとうございます」


 冒険者ギルドのギルドマスターのライザックさんと副ギルドマスターのパトリスさんもありがたいことに2人とも参加してくれた。先日お誘いに言ったら2人ともわざわざ時間を調整してくれたみたいだ。


 ここは街からも近い場所だから、何か緊急事態があった時にはギルド職員の人が呼びに来てくれるらしい。まあ、この駆け出し冒険者が集まる街ではそこまで大きな事件が起こることはほぼないからな。


「なにやらうまい肉が食えると聞いたぞ。ほら、俺達からの差し入れだ。うまい酒と果実のジュースを持ってきた。今日はこいつでパァーっとやろうぜ!」


「ありがとうございます。お肉についてはベルナさんとフェリーさんから頂いたものと、ルハイルさんからの頂きものになりますので、みんなでありがたくいただきましょう」


「ベルナさん、フェリーさん、ありがとうございます」


「2人ともありがとうよ。……あとはあれだ。王都へ戻ったら、ルハイルのやつにもよろしく言っておいてくれ」


「ふふ、分かりましたわ。ルハイルさんに伝えておきます」


「伝えておく」

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