第176話 新商品たち
「やっぱり販売制限があるのかあ……」
「大変申し訳ございません、アウトドアスパイスはおひとり様1つまで、カレーとようかんは2つまででお願いします」
新しく販売する商品の紹介を終えて、店をオープンした。転売防止のため、他の商品度同様にこれらの商品には販売個数制限が付いている。
アウトドアスパイスは2つまでにしようか迷ったが、みんなと相談した結果1つにした。香辛料の方は安くなってきているとはいえ、他の香辛料を売っている店との兼ね合いもあるので一応だな。様子を見て問題がなさそうなら、個数制限と値段を少しずつ変更するつもりだ。
「大変お待たせしました。それでは2名様、ご入店ください」
「よっしゃあ、待ってました!」
「とりあえず新商品は全部買うぞ!」
2名が店から退店したのを確認して、入り口にいるアンジュが次のお客さんである男の冒険者2名をアウトドアショップの店内に入れくれる。今日はかなりのお客さんが開店からお店に並んでくれていたので、全員のお客さんを一度に入店させることはできない。
そのため、以前も行っていた人数制限を設けて、店の中には常に一定のお客さんがいるようにしている。そして外で待っているお客さんには今日から販売を始めているようかんを小さめに切って試食してもらっている。
「お店の中に入れるお客さんの数は限られているから僕たちからしたらいいけれど、やっぱりもう少し大きな店の方がいいかもね」
「うん、ランジェさんの言う通りだね。そろそろ新しい店舗についても考えないといけないね」
今週はランジェさんも店員として一緒に働いてくれている。
新しい商品を置く場所がないのもそうだが、今のアウトドアショップは元の世界のコンビニくらいの大きさしかないので、お店に入ることができるお客さんの数も制限されるのが難しいところだな。
やはりもっと大きなお店に移転することを本格的に考えなければならない。
「テツヤ、また新しい商品が入ったんだな」
「テツヤ、お邪魔するわよ!」
「久しぶりだな、テツヤ」
「ロイヤ、ニコレ、ファル、いらっしゃい! ああ、新しい商品を仕入れたから見て行ってくれ」
昼過ぎくらいにロイヤ達が店へ来てくれた。時間的に朝の依頼を終えて、早めに切り上げて店に来てくれたのかな。
「聞いたぞ、ついにアウトドアスパイスの販売を開始したんだってな! あれは焼いた肉や野菜に掛けると本当にうまいし、絶対に売れると思うぞ!」
「ああ、試食とこれまでの店の実績ですでに結構売れているよ。あとはリピーターがどれくらいいるかだな」
ロイヤ達には以前からアウトドアスパイスだけはこっそりと売っていたから、アウトドアスパイスのことはすでに知っている。今のところは朝の試食でアウトドアスパイスの味を確認したお客さんと、以前からこの店で販売していた商品の実績もあって、結構な数が売れている。
とはいえ、アウトドアスパイスはそこまで一気に使用するものでもないから、そこまで毎日売れ続けるというものでもないはずだ。一度使い切ったあとにもう一度買ってくれるが大事だな。
「この味なら多少高くても買ってくれると思うぞ。これがあるだけで普段の食事が贅沢な味になるからな」
「ファルがそう言ってくれるなら安心だよ。そういえば、冒険者ランクがDランクに上がったけれど、調子はどんな感じなんだ?」
俺たちが王都へ行く前くらいにロイヤ達の冒険者ランクがEランクからDランクへ昇格している。
「そうね、いつもより少し依頼が難しくなってきたわね」
「ああ。基本的にEランクの依頼よりも少し難しい依頼になっているな。だけど、この辺りにはそこまで強い魔物はいないから大丈夫だぞ。もちろんだからといって油断なんかしないからな」
「……そっか。みんなも頑張っているんだな」
冒険者ランクが上がると、当然その分依頼は難しくなっていくが、駆け出しの街であるここアレフレアの付近ではそれほど危険な魔物はいないようだ。長い付き合いとなったロイヤ達に万が一のことがあったら嫌だもんな。
それに俺と出会った頃は本当に駆け出し冒険者で、何度か油断をしていてリリアに注意されていたロイヤも今では立派な冒険者になっている。このアウトドアショップがいろいろと成長しているように、ロイヤ達も成長しているということだ。
だけどロイヤ達が成長していく分、この駆け出しの街を離れる時期も迫っているというわけだから、何ともいえない気分である。
「さあ、今日から販売を始めたインスタントカレーとようかんもおいしいから、ぜひ試してみてくれ!」
「ああ、もちろん買わせてもらうぞ。テツヤの店の商品はどれも便利だったり美味しいものが多いから楽しみだぜ!」
「冒険者ランクも上がって、報酬も増えてきたからな。今回も期待しているぞ!」
「ええ、楽しみにしているわ!」
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