第175話 レトルトカレーとようかん


「続いての商品はこちらです!」


 次の商品は俺ではなく、フィアちゃんとドルファがお客さんへ茶色の袋状の物を掲げてくれた。フィアちゃんは後ろのお客さんにも見えるように両手で背伸びをしながら保存パックを持ち上げているのがなんだか微笑ましい。


「こちらの商品はこの茶色い『保存パック』という容器の中にそれぞれまったく別の商品が入っております。この保存パックは一度封を開けるまで、中の商品は2か月以上も持つという優れた保存容器となります」


「「「おおお~!」」」


「とはいえ、単純にこの容器に入れればどんなものでも長持ちするというわけではありませんのでご注意ください。こちらの保存パックには2種類の商品が入っております。まず、フィアちゃんが持っている方は『インスタントカレー』です」


 フィアちゃんが持っている保存パックとは別に店の中からランジェさんが温めたお湯の入った鍋とそのお湯に入った保存パックを持ってきてくれる。


「こちらのインスタントカレーは液体状の料理となっております。そして、このインスタントカレーは単品で食べるものではなく、お米と一緒に食べる料理です。作り方はとっても簡単! まずは鍋に水を張ってお湯を沸かします。この際にインスタントカレーの入った保存パックも一緒に鍋の中に入れておきます」


 お客さんたちの目の前でインスタントカレーの作り方を説明していく。


「お湯が沸きましたら、当店で以前より販売しておりますこちらの白米のアルファ米へ沸かしたお湯を一定量入れてご飯を準備します。そして保存パックの封を開けて、温めたインスタントカレーをご飯の上にかけるだけ、これでカレーという料理の完成です!」


 俺が説明をしながら、ランジェさんがアルファ米を器に移してお湯を入れてご飯を作る。そして保存パックの封を開けてご飯の上にカレーをかけた。


「うおっ、めちゃくちゃいい香りがするじゃねえか!」


「……でも初めて見る色の食べ物ね、本当に美味しいのかしら?」


「この店で売っている料理はどれも美味しいから大丈夫だろ。それに作り方も簡単だな。あの保存パックというものを温めるために沸かしたお湯をアルファ米に加えればいいだけか」


 素晴らしいカレーの香りと、初めて見る茶色い液体状のカレーを見てお客さんたちが様々な感想を述べる。


 確かにカレーの見た目はこの異世界では見たことがない色をしていて、初めて見る人には少し試し難いものがある。しかし、そこはこれまでのこの店の信用があるので、問題はないだろう。


「それでは少しずつですが、朝早くから並んでくれました皆さまに試食していただきましょう!」


 今ランジェさんが作ってくれたカレーを10人分ほどに分けて、お店に並んでくれたお客さんたちに試食してもらう。さっきの干し肉にアウトドアスパイスをかけたものはたくさん準備をしていたが、カレーの方は先着10人分限定だ。


 カレーの方は器などの洗い物もあるので、朝並んでくれた全員分を用意するのはだいぶ手間がかかるので先着10人分のみである。


「うおっ、なんだこれは! 今までに食べたことがない味だぜ!」


「ああ、複雑な味の香辛料がたっぷりと入っているぞ! 少しだけ辛いが、むしろそれがあとを引く味だな。これっぽっちじゃ全然足りねえよ!」


「なるほど、こっちのカレーだけじゃ味が濃すぎるけれど、この白米と一緒に食べるとちょうどいい味になるのね!」


「お湯を沸かすだけでこの味が楽しめるのか! こりゃ贅沢な味だぜ!」


 試食してくれたお客さんの反応は上々のようだ。お店のみんなやベルナさんとフェリーさんにも好評だったし、カレーの味は異世界の人も十分に楽しめるようだ。


 それにしてもうちのお店に来てくれるお客さんの舌もだいぶ肥えてきているな。香辛料の味とか、ご飯と一緒に食べる意味とかを説明する前に分かってくれている。


「ちくしょう、なんてうまそうに食っているんだ!」


「すげーいい香りだ。あともう少しだけ早く来てりゃあな……」


 試食を食べられなかったお客さんが悔しがりながら試食できたお客さんを羨ましそうに見ている。カレーって本当にいい匂いだもんな。




「さて、最後の商品はこちらの『ようかん』です! こちらのようかんは甘い携帯食となっておりまして、見た目の割にエネルギーが豊富で糖分や塩分なども補給することができます。先ほどのカレーと同様に封を開けなければ2か月ほど持つので、非常食としても利用することが可能となっております」


「「「おおお~!」」」


 実際にこのグレゴさんが作ってくれた保存パックで保存するともっと持つと思うのだが、とりあえず確認ができた2か月持つということにしてある。賞味期限とかは余裕を持たせて説明をしておいた方がいいからな。


 ようかんの方はかなり小さめに切って、朝早くから並んでいるお客さん全員に試食をしてもらった。従業員のみんなやベルナさんとフェリーさんと同じように甘いお菓子の反応も上々だった。下手をしたら、ようかんが一番驚かれていたかもしれない。


 こちらの保存パックの商品は保存パック自体が銀貨5枚と少しお高めで、レトルトカレーが銅貨5枚、ようかんが銀貨1枚、それに利益と保存パックを洗浄する料金を含めて、レトルトカレーが銀貨7枚、ようかんが銀貨7枚と銅貨5枚でも販売価格となった。


 2回目以降は保存パックを持ってきてくれれば、銀貨5枚分を割り引いての販売となる。どちらも量の割に値段がそこそこするので、駆け出し冒険者にはたまの贅沢として購入してもらえればと思っている。




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