第81話 レトルト食品


「お待たせ! 今日の晩ご飯はカレーだよ!」


「カレー……聞いたことがない料理だな。すごい色をしているが、本当に美味しいのか?」


 カレーとはいっても、ルーのカレーではなくレトルトカレーである。


 今回俺のアウトドアショップ能力がレベルアップしたことによって購入できる商品が大幅に増えた。その中でも特にインスタント商品やレトルト食品が増えていた。


 前回のレベルアップでインスタントスープが購入できるようになった時に予想はしていたが、インスタント食品やレトルト食品にも想像以上に種類があるんだな。


「この下に白いご飯があるからそれと一緒に食べる料理なんだ。少し辛いかもしれないけれど、独特なスパイスの味がして美味しいよ」


 最近のアウトドアショップではアルファ米と呼ばれる水やお湯を加えるだけで、簡単にご飯ができるインスタント食品が売られている。


 登山やキャンプの時にお手軽に食べられるし、災害用の保存食として長期保存が可能となっているのだ。


 今回はそのアルファ米の白米にお湯を入れて作ったご飯にレトルトカレーを温めてからかけている。カレーの味も選べたが、今回は間の中辛にしてみた。俺も相当久しぶりのカレーだ。


「ああ〜レトルトだけどカレーの味だ!」


 なんだかすごい久しぶりに元の世界の料理を味わった気がする。こちらの世界の料理も不味くはないのだが、やはり元の世界の慣れた味には敵わない。たとえそれがレトルトだとしてもだ。


「おお! これは今までに味わったことのない不思議な味だが、とても美味しいぞ! 外見からは考えられないほど複雑で後を引く味だな!」


「俺がいた元の世界の国ではこの白い穀物がご飯といって、パンの代わりの主食なんだ。ご飯だけだとあまり味がないけれど、味の濃いものと合わせると本当に美味しいんだよ」


 久しぶりのお米の味だ。やはり日本人はお米だよ!


 それに最近のレトルト食品は普通に美味しいな。全然普通のご飯として食べられるぞ!




「いやあ満足だ。やっぱりカレーは正義だな!」


「正義かどうかは分からないが、とても美味しかったぞ」


 リリアは律儀にちゃんと返してくれた。元の世界ではカレーもラーメンも寿司も正義である。


 久しぶりのカレーということもあり、2人前をペロリと食べてしまった。こうなると福神漬けかラッキョウあたりが欲しくなってくるな。今後カレーが食べられるようになるなら、なにか漬物を作ってみるのもいいかもしれない。


「たぶん明日はランジェさんも来ることだし、どれを販売するか相談しないといけないな」


「ふむ、間違いなくこのカレーは売れると思うぞ。それに水やお湯を入れるだけで簡単に作れるこの便利な米というものは、間違いなく売れるだろうな」


 カレーについては容器である銀色のレトルトパウチがないから販売するのは微妙なところだ。容器をして購入するので、今回は鍋に出してそのまま温めた。


 アルファ米の方は水やお湯を入れるだけで簡単に作ることができるから、冒険者にとっては便利だろうな。


 しかもなんとこのアルファ米は白いご飯だけではない。他にも五目ご飯、チキンライス、わかめご飯の4種類もある。これはインスタントスープと一緒で、駆け出し冒険者達に売れるに違いない。


「しかもこのアルファ米は数年はもつはずだから、何かあった時の非常食としても使えるんだよね」


「おお、それはすごいな!」


 アルファ米は炊いたご飯を乾燥させて水分を抜いたものだから保存も効く。なかなか便利なものが出てきたものだ。


「しかも今回新しく購入できるようになったのはこれだけじゃなくて、甘いお菓子もあるんだよ」


「甘いお菓子だと!?」


 そう、今回買えるようになった商品の中にはスイーツと呼べるものがあった。ようかんは一口サイズに切って皿の上に取り分けてから、テーブルの上に置く。


「これはようかんとチョコレートバーだよ」


 そう、元の世界のアウトドアショップには登山をする人のために、高カロリーな行動食が置いてある。


「ようかん、チョコレートバー……どちらも聞かない名前だな」


 当然と言うべきか、リリアはようかんもチョコレートも食べたことがないらしい。


「……っ!? これはとっても甘いな! この前の焼いた果物も美味しかったが、こちらのふたつは果物とは違った甘さだ!」


 確かにようかんやチョコレートバーは、果物とは違った甘さがある。


 この街には砂糖はあるが、小豆やチョコレートなんてものは売っていなかった。本当はどちらもエネルギー補給目的の行動食だが、甘いものが少ないこの街では立派なスイーツになる。


「しかもこれひとつで結構なエネルギーにもなるから、冒険者のお昼ご飯代わりにもなるんだ」


 当然本来の目的であるエネルギー補給にも適しているから、冒険者にとっての行動食になる。


「すごいぞ、テツヤ! これは間違いなく冒険者達に売れるな!」


「そうだね、甘いもの目的とエネルギー補給目的の両方で売れると思うよ。どちらも小さいけれど、ひとつ銅貨2枚で仕入れられるから、3個セットとかにして売るのがちょうどいいかな」


 相変わらずこの能力には包装紙などが付いていないから、インスタントスープと同じように容器と一緒に販売するようになりそうだ。そうなるとやっぱりカレーの販売は少し難しいかもしれない。


「他にもいろいろな商品が買えるから、商品として売れるか検討していこう!」

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