33.王子19歳・秋。誕生日。

 今日は私の二十九歳の誕生日。

 まだクレイグ様に勝てないオースティン様は、部屋で二人きりの時間、私の手を握られた。


「あと、一年しかないのか……」

「……王子……」

「ずっとつけてくれているね、これ……」


 薬指につけられた、トパーズの指輪を見ながらオースティン様はおっしゃった。


「前に外すと、怒られましたから。それに私の大切な宝物ですし」

「それでも、残り一年で僕が勝てなければ、その指輪は外すんだよね」


 私は、なんて答えていいのかわからずに、口を閉ざしました。

 おそらくはそうなるでしょう。

 クレイグ様との結婚が決まった時には、この指輪は外さなければならなくなりますから……。


「外しても、ちゃんと大切に保管しておきます」

「…………うん…………っ」


 オースティン様の目から、大粒の涙が……。

 もう勝てないと思っているのでしょうか。

 おそらく、戦っている王子が一番実力差をわかっているんでしょう。


「王子……」

「アリサ……好きだ……」

「はい……、ありがとう、ございます……っ」


 私のこれは、もらい泣きですから……。

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