27.話のあとのあと。

「僕が好きなのは、アリサだよ」

「…………………………………………はい?」

「たっぷり十秒は固まったね。僕の気持ち、ぜんっぜん伝わってなかったのか。泣きそうだよ」


 いえ、だって、そんなこと一言も……


「からかってます?」

「真剣」

「いつからです?」

「会った時から」

「王子が五歳でしたよ?!」

「五歳の時からだよ」


 いやもう……冗談としか思えないです。


「本気じゃなきゃ、わざわざラウリル公国まで月見草祭りに行ったりしないよ。それだけ僕は真剣だった」

「それだけ本気だったなら、キスする前に教えてくださるべきだったと思いますが?!」

「ご、ごめん、あの時は……いっぱいいっぱいで」


 紅葉するように顔を赤らめるオースティン様。

 私もなんだか胸がいっぱいになってきました。


「僕の気持ちが伝わったなら、改めて言うよ。来年の春、僕と結婚してほしい」

「え、無理です」

「なんでだよぉおおおおおおおーーーーーーーーッッッツツ!!!!」


 王子の叫声が城中に響き渡りました。

 気持ちは嬉しいですが、それはそれ、これはこれですから!

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