25.王子17歳・夏。話。

「春先から、ずっと殿下が腑抜けているんですが、理由をご存知ですか?」

「そうなんですよ、クレイグ様。もしかしたら……あの時のことが原因でしょうか」

「あの時?」


 私はクレイグ様に、断固拒否した話をしておきました。それが原因とは限らなかったけれど。


「それが原因です!」


 断定されました。


「やっぱりそうだったんですね。なんかあの時から、様子が変だなぁとは思っていたんです」

「いや、あの……失礼ですが、お気付きでない……?」

「なにをです?」

「殿下がアリサ殿のことを……ごほん。いえ、なんでもありません」

「言いかけて、なんですか」

「本人に聞くべきですよ。それでは」


 クレイグさん……なんだかかっこよさげに去って行きましたが、社会の窓が全開でした。

 教えるべきだったでしょうか。

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