14.王子12歳・夏。競う相手。

「はぁっ、はぁ!」

「ハハハ、まだまだですね、王子!」

「……くそっ」


 オースティン様は最近、とてもワイルドになられた。

 騎士のクレイグ様と打ち合いをしていて、悔しそうにしてらっしゃる。


「すぐに追い抜かしてやるからな……!」

「俺もまだまだ発展途上なので、無理だと思いますよ」


 こっそりと見に来てしまった私は、悔しそうな王子の顔を見て心が痛む。

 クレイグ様は私より三つ年上の二十五歳。

 まだまだ男盛りなクレイグ様に追いつくのは至難の技でしょう。


「まだ、もう一度だ!!」

「じゃあ殿下、次に勝った人がアリサ殿と付き合うというのはどうですか?」


 は? 私?!


「クレイグ、まだ諦めてなかったのか!」

「諦める必要がどこに?」

「じゃあ僕が勝ったらクレイグはアリサのことを諦めて──」

「私を勝手に賞品にしないでくださいませー!!」


 こっそり来てたのに、つい顔を出してしまったではないですかー!!

 

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