09.王子10歳・春。誕生日。

「十歳のお誕生日おめでとうございます、オースティン様」


 十歳はこの国では節目の誕生日。どこの家庭でも十歳は盛大にお祝いをするのです。

 オースティン様にも盛大なパーティーが開かれてのお祝いがあり、少々お疲れ気味のよう。


「まだ十歳か。早く大人になりたいよ」

「子どもの頃の時間というのは貴重ですから、急いで大人になってはもったいないですよ。どうしてそんなに早く大人になりたいんですか?」

「それは……」


 オースティン様は少し考えた後で、私に手を伸ばされました。

 その手が私の頬に触れます。


「大人なら、こうして好きな人に堂々と触れるんだよ?」

「いえ、大人の方が触れられませんよ。それは逆にこどもの特権かと思います」

「なーんだ。じゃ、子どものままでいいや」


 やっぱりまだまだ子どものようです。

 ってか今、好きな人って言いました?

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