王子に溺愛されています。むしろ私が溺愛したいのですが、身分差がそれを許してくれそうにありません?

長岡更紗

01.王子5歳・春。求婚。

 私の名前はアリサ。

 宰相の養父ちちの下、厳格に育てられた私はなぜか今……。


「ありちゃー! ありちゃー!」

「なんでしょうか、オースティン様」

「ぼくとけっこんちて!」

「はぁう?!」


 五歳になられたばかりの王子殿下に求婚されています!!

 オースティン様、十歳も年上の女性と結婚なんて、この国ではあまりないことなのですよー。

 ついでに私の名前はアリチャではなくアリサです。まだまだ舌足らずな感じが可愛らしいですね。


「ぼくとけっこんちてくれないの?」

「それはですね、私が決められる問題ではないといいましょうか」

「ふえ……」


 あ! 大洪水の予兆が……!


「びえぇぇええ!! けっこんちてくれなきゃ、ありちゃにいじめられたっておとうちゃまに言いつけてやるぅ〜!」


 五歳児王子様の悪知恵!!


「わかりました! わかりましたから、陛下に報告するのだけはご勘弁を!」

「やったあ!」


 ……涙はどこにいったのですか?

 オースティン様の将来に不安しか感じないのですが。

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