第8話 個人的にどうしてもダメだった経験談

 結婚相談所では、入会時に担当のアドバイザーが着く。

 最初こそ、アドバイザーの担当の会員を印象でマッチングしてくれたりしてたのだけど、自分から積極的に会いに行かない限り、いつの間にかフェードアウトしていってしまう。


 入れ替わりが激しくて、そのうち自分の担当が誰なのかもわからなくなった。




 会員同士の交流として、事務局主催の合コンが頻繁に行われていた。

 はじめのうちはマメに参加していたのだけど、同性会員の愚痴大会がはじまったり、携帯電話のメールアドレス交換して意に沿わない相手から連絡が着たりするので、そのうち控えるようになっていった。


 決定打となったのは、年齢や職業フリーの合コンに参加した時のこと。


 自分の父親の年齢に近い男性に、「子どもも成人して、後腐れもないから安心して来てください」と名刺を渡されてお付き合いしてほしいと意思表示された。


 正直、大袈裟ではなく恐怖を感じた。


 父親と同世代の相手に、結婚相手として見られたことが物凄くショックだった。


 あの衝撃は忘れられない。

 あの人はたぶん、会場の女の子全員に名刺を配っていたんじゃないかと今でこそ想像できるのだけど、いい大人が娘ほどの年齢の小娘を喜んで相手にしたがるさまは生理的に拒否感しかなく、ただひたすらに気持ちが悪かった。


 この時に会った人たちからデータが複数送られてきたのだけど、夜の飲食関係者や、超がつくヘビースモーカー、ギャンブル好きや年齢が一回り以上の年上だったため、自分の対象範囲外にしか自分の需要がないのかと落ち込んで、気持ちが折れてしまった。

 まれに高学歴で有名会社の社員だと語られても、外見や性格、話しかたが非常に強烈な個性持ちで、おそらくは太刀打ちできる女性は限られるように思えた。


 合コン参加者は、大半が年齢、学歴、年収、就業環境、家族構成、喫煙、趣味がギャンブル等で、結婚相手としてなんらかの難を抱えていた。

 どうしてもデータ交換時点で相手に弾かれてしまうので、会員とのマッチングに恵まれない人が、実際に会える機会を切実に求めて集まるのがこの合コンの実体であると気づいた。




 たぶん、あの年配男性といまの自分が同年代くらいかなと思うんだけど、もし夫が私と死別とかで改めて婚活することになったとしても、だよ。


 やっぱり、あんなことはしないんじゃないかな。


 娘を持つ親ならなおさら、よしんば息子持ちだとしてもだ。

 息子と同世代の嫁をめとるって、戦国時代ならまだしも現代で、常識があったらあり得ないと思わない?


 てめーには関係ねーだろ、個人の好き好きだろーがと言われればそれまでだけどさ。

 それでも、大切に親御さんによって育てられたお嬢さまやご子息が立派に独り立ちしようとしてる、そんな時に、子どもとしてではなく伴侶にしたいと考えて標的にしてる親同世代なんて……考えるだけで不快だよね。


 当時の自分がその場に参加したのが不運だっただけと言われればそれまでだけど、まさかそんな嗜好に付き合わされるとは常識的に思わんじゃん?


 芸能人はステイタスのように若い女性と結婚してこれ見よがしに見せびらかしてるのもいるけど、アレ、男が金持ってるか、知名度がなければ可能性は超低いからね。


 性格だけで選ぶ、親子とか孫ほどの年齢差の結婚なんて、将来を考えたらリスクでしかない。

 相手が早々にしんで、遺産もらえてその後は好きにできるなら、仕事みたいなもんだと割り切れる人もいるかもしれないけど。


 特殊な環境で育って、ひたすら父性に可愛がられたいとの憧れがあるか、母性の塊で年上異性からもベタベタに甘えられたいとの願望がある女性しか、選択肢として可能性は無いと思うのよね。女性側にも尋常ではない嗜好があるわけ。


 夢を持つのは自由だけどさ、アイドルと結婚できる以上に、超『歳の差』婚って極めてレアケースだと思うのよ。



 子どもほどに歳が離れた異性に、自分が恋愛感情という興味を持ってもらえるなんて思い込みがね…もう痛いっていうか…いくら男はいつまでも現役、とかいうけどさ。

 あの老いの見える容姿で、若い女性に選んでもらえると考えてる時点で幼稚すぎると思うんですよ。


 その場のノリにしても、おまけに『冗談よ冗談、馬鹿だなーオマエ本気にすんなよ』と追加で言ったとしてもだよ?

 やっぱりソレ、冗談にもなってないんだよ。


 しかも独身貴族なら、ま〜だ成長し切らない精神だからアカンままに今があるのね、とも思える。年甲斐もなくアホやな、とは思うけど。

 けど! アンタ成人した子どもがおるんやろ?!


 身をわきまえずに、ワンチャンあるとか考えてる時点で、人間性に歪みがある、相当ヤバイ人種だと思う。



 ついでに付け加えてみるならば、逆のケースを想像してみるわけ。


 例えば。



 更年期終わる頃の一般人の子持ち女が、息子ほどの年若い男に『結婚しません?』なんて言おうものなら。

「色ボケババア気色悪』と老若男女総動員で、袋叩きに合うのが関の山なのですよ。


 そのくらい離れているほうが好き、という男性もいることはいるけども。


 需要と供給がマッチする場所で出会うべきよね…。


 女性がそのような選択する人が少ないのは、身体から分裂した生命体を、分身体のような共感覚で子を見るからなのかな…。

 赤ん坊から、学校や塾での成長過程を間近に見る立場だったから? 


 うーん。

 なーんか腑に落ちんとゆーかなんとゆーか。

 結局、若い女を追っかける年配って、我が子を奥さんとともにきちんと育ててこなかったんじゃない?とか穿うがった見かたをしてしまう。

 そのあたりが、忌避する原因になっているのかも。


 変じゃね?

 なんだろうね、おっかしいよねー?(^^;;




 続く。

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