第百六十話 両想い

「お、俺は……」


 全員に見詰められ固まる。う、うわぁ、な、なんでこんなみんな注目してるんだよ!

 顔がどんどんと火照って行くのが分かる。


 く、くそー! なんでこんな公開処刑状態で告白せにゃならんのだ!!

 で、でも今逃げるわけには……ここで逃げたら最低だ!



「お、俺は!! 俺は……フィーが……クフィアナが好きだ!! 一生傍で守りたい!!」



 恥ずかしさのあまり俯いてしまった。情けない。かっこ悪い。こんな肝心なときにまで情けないままの俺か。



 シンとしたまま、誰もなにも言葉にしない。

 おぉう、誰かなんとか言ってくれよ! 居た堪れない!



「生意気にもモテモテだな!!」



 静寂を破る聞き覚えのある声に嫌な予感がし、ガバッと顔を上げた。


 そこにはシーナさんがいた。


「な、なんでシーナさんが!?」


「なんで? それは私が治療師だからだ!!」


「え、あ、なるほど」


 今回の戦いのために治療師を同行させたのか。で、やって来たのはシーナさん……やっぱりというかなんというか……。


「王配になるのか! しかし私の研究対象であることは忘れるなよ!」


「え、あ、いやぁ……」


 それはフィーに聞いて欲しい……。ちらりとフィーを見た。

 フィーは頬を赤らめ可愛らしく微笑んでいた。


 な、なんだこれ! 今までクールな姿しか見たことがなかったのに、なんだこの可愛いの!!


「リュシュ!」


 そしてはにかむフィーに胸ぐらを掴まれた。


 えっ!?


 そしてグイッと引っ張られると目の前にフィーの綺麗な銀色の瞳が……。


「「「「!!!!」」」」


 声にならぬ悲鳴が聞こえた。


 俺はというと頭が真っ白に。間近に見えたフィーの瞳は閉じられて見えなくなったかと思うと、ふにっと唇に何かが触れた。


 完全に固まっていた俺は何が起こったのか理解不能。


 背後で「なによ!!」と怒ったようなミリアの声が聞こえた。


 フィーは顔を離し、胸ぐらを掴んでいた手を離し、俺の頬を包んだ。


 そしてふんわりと微笑むと……


「愛している」


 そう言葉にした。



 頭がボンッ! と爆発したのでは!というくらいのパニックに!


「あ、あ、俺、俺も、その……あ、あいしてる……」



「バッカみたい!! なにが愛よ!! そんなもの幻想よ!!」


 そう捨て台詞を吐くとミリアはぷりぷりしながら去って行ってしまった。な、なんなんだ、一体。


「アハハハ!! やるわね! リュシュ!」


「えっ」


「ミリア、ライアンと別れたばっかりだったのよ。それでリュシュがたまたま強くなって帰って来たもんだから、自分のものにしようとしたんでしょ」


「えぇ!? そうなの!?」


「リュシュを捨てたくせに、なにを今さらよね! ざまぁ見ろってのよ!」



「リュシュを捨てた?」



 フィーから物凄い低い声が聞こえた……。


「え、あ、えーっと、うん……」


 なんだか空気が冷たくなったような……気のせいか?


 今さら蒸し返したくないし、情けないやら恥ずかしいやらで、触れないで欲しい……。


「リュシュは私のものだ」


「!!」


 いやもうやめてー!! 恥ずかしいし、慣れてないからどうしたら良いか分からないし!


「あ、あ、あー、シーナさん、そういえばディアンは?」


 居た堪れなくてフィーから視線を逸らしてしまった。あんなに真っ直ぐ想いを伝えられたことなどないし、ましてやモテたことなど生まれてこの方一度もない俺にはカッコよく返せる言葉など持ち合わせていなかった。


「ん? ディアンか? ディアンなら、ここへ来る前に野生の卵が見つかったから置いてきた」


「えっ!! 野生の卵!?」


「あぁ、以前言っていた番に温めさせる方法を試すと言っていたぞ」


「!!」


 バッとフィーに振り返った。フィーは俺の言いたいことを理解してくれているのだろう。頷いてくれた。


「私もすぐに追いかける。行くと良い」


「ありがとう!! フィー!!」


 振り返り叫んだ。


「ヒューイ!!」


 ヒューイは人集りの出来た俺の頭上から、人々を遠ざけるように大きく翼を羽ばたかせ舞い降りた。


『乗れ!』


「頼む!!」


 ヒューイに飛び乗った。


 何が起こったのか理解出来ていないラナカには申し訳ないが、きっと皆が説明してくれるだろう。

 周りを見回すとフェイと目が合った。

 フェイは頷いて手を振った。有難い!!さすが頼れる俺の仲間だよ!


 ヒューイの手綱を握り合図をすると、ヒューイは一気に空へと舞い上がった。



************

次話にて完結です!

本日この後19時台に最終話更新します!

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