第百四十七話 応戦
アンニーナたちは竜に騎乗し、一気に空高く舞い上がる。森から離れ、少し様子を見つつ城の裏手に回る。高い棟のおかげで城の正面側は全く見えない。
「見た限りでは見張りもいないわね」
「うん……それがなんだか不気味だけど……」
「リュシュたちが見付かったのなら、そっちに兵が取られているのかもな」
「「…………」」
ネヴィルの言葉にフェイもアンニーナも無言になってしまった。おそらくネヴィルの言葉は正解だろう。図らずもリュシュたちが囮になったようなものだ。アンニーナは悔しさを滲ませた。
「急ごう!」
フェイも悔しさを滲ませるが、しかし今躊躇っている場合ではない。フェイは手綱を握り締めた。
フェイの合図と共に竜たちは裏手にある棟の屋上部分に降下していく。
竜三匹がゆうに降りられるほどの広さ。極力静かに降りる。目の前には謁見の間があるという高い棟がそびえ立つ。
「この棟の地下にあるんじゃないか、って言ってたよな?」
「うん、この地下が一番怪しいんじゃないか、って」
「なんだか気持ち悪い気配を感じるしね」
不気味な気配が漂うなか、城の中心にあたるこの棟が一際不気味な気配を放っている。魔力とも
竜たちはこの場で待機。棟の隅にある下へと続く階段を降りる。
「さあ、気合い入れていくぞ!!」
ネヴィルがそう声を掛けると、三人は鞘から剣を抜いた。
◇◇◇
バシィィィイイインン!!!!
激しい音とともに身動きが取れなくなった!!
「!?」
な、なんだ!?
「「リュシュ!!」」
ヴィリーとヒューイの叫び声が響き渡る。
俺に向かって剣を振り上げ兵が迫りくる! 俺は咄嗟に剣を抜こうと腕を動かそうとしたが、身体が動かない! なんだこれ!! 見えない縄にでも縛られているようだ!
「うぉぉおおお!!!!」
ロドルガさんが雄叫びを上げ、大剣を振り回す。ナザンヴィア兵たちはその大剣に驚き、一瞬動きを止めた。そこを見逃さないとばかりに、ロドルガさんの大剣が真横一文字に兵たちをなぎ倒す。
兵たちの身体は吹っ飛び、地面や壁に叩きつけられ気絶する。あれだけ激しい切り付けだが、鎧のおかげなのか、ロドルガさんの手加減なのか、血が噴き出したりはしなかった。
ロドルガさんは俺を背後に庇うように目の前に立ち大剣を構え直す。俺の背後にはヴィリーとヒューイも俺を囲う。
くそっ! 俺が庇われてどうすんだ! なんなんだよ、これ!!
「リュシュ、それは捕縛用に開発された魔導具だ!簡単には取れない!! 魔法でなんとか外せないか!?」
「魔法……」
考えている間にも兵が迫る。ヴィリーとロドルガさんが剣で応戦をする。ヒューイは激しい吹雪を放出。辺り一面が真っ白になる。
魔法に驚いた兵たちは後退る。ヒューイの吹雪を直接受けた者は、皆、下半身が凍り付き動けない。その隙にヴィリーとロドルガさんが切り付けていく。
目に見えぬ捕縛魔導具。まるで縄に縛られているような……。
バレイラシュを運んだときのような魔導具だな……。
考えても仕方ない! 思い付くだけの魔法で試してやる!
手に魔力を集中するんじゃない。あの風魔法で早く走ったときのような応用だ! 身体全体から魔力を放出するんだ!
炎魔法を身体全体から放出してみる。俺自身から炎が出るわけではない。じりじりと俺の身体が陽炎のように揺らめく。身体の表面を物凄い高温の魔力が覆う。しかし捕縛はなんの変化もない。身動きが取れないままだ。
今度は雷撃だ! 風だ! と様々な魔法を試す。しかし変化はない。これで駄目ならあの「黒魔法」を……と考えながら最後に氷魔法を試す!
すると今までの魔法が全て混ざり合うかのように俺の周りを覆う魔法は冷気と共に黒い靄を放ち出す。
「うぉぉおおお!!動け!!!!」
魔力に力を込める。身体に力を込める。
バシィィィイイインン!!!!
この魔導具を受けたときと同じような激しく大きな音がした。それと同時に身体が動く!!
「動いた!!!!」
ヴィリーとロドルガさん、ヒューイが必死に応戦してくれている。そこに勢いのまま黒魔法を発動した!
今まで黒魔法の使い方など分からなかった。どうやって発動するのかいまいち理解していなかった。しかし今は発動出来ると分かる!!
身体のなかの魔力。コアに宿る魔力を身体から放出する。炎でもない、氷でもない、風でも雷でもない、黒魔法!!
激しい風と共に黒い炎が噴き出す! 両手を天に突き上げた瞬間、そこに集中したかと思った黒い炎は四方八方に広がり、ナザンヴィアの兵たちを飲み込んだ!
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