第百三十九話 戦闘訓練
「戦闘訓練?」
「うん、リュシュの能力がどんなものかということも俺たちは知らないし、リュシュ自身実戦経験があるわけじゃないだろ? だからそれらを知るためにも少しだけでも訓練すべきだよ」
「なるほど」
「確かにな。お前たち同士でも力を把握しとかないと連携が取れんからな。それにヒューイとの訓練も必要だろ」
フェイの意見にヤグワル団長が同意した。
「で、リュシュはどんな魔法が使えるようになったんだ?」
ネヴィルが興味津々だ。それに釣られて他の皆も興味津々な顔。
「えっと……癒し以外はほぼ全属性?」
皆が「え?」といった顔をしたのが分かった。
なんだが居た堪れない気分にもなったが、ここで嘘をついても仕方ないしな……。
「全属性!?」
ネヴィルが真っ先に声を上げた。
「う、うん。俺もまだどれだけの魔法が使えるのかを試したことがあるだけで、威力とかはどれくらいのものかは分からないんだ……。あ、精霊の力を借りたら力が増すことだけは分かってるけど」
「精霊の力!?」
再び皆が驚いた。
「う、うん。精霊の姿が見えるのと同じで力も借りられるらしい」
百聞は一見に如かずということで実際にやってみることになった。
分かりやすく炎を出す。炎の精霊に声を掛けるとひょっこりと顔を出した。そして俺の身体に触れてくれるように頼む。
すると俺の掌から放出されていた炎がボッと勢いを増した。
「うお、これお前が調節したわけじゃないんだな?」
「うん。もっとしっかりと魔力を放出したい場合は自分のなかに精霊の力を取り込んでから放出するんだけど、瞬間的に勢いを増すくらいなら精霊が身体に触れただけでいけるみたい」
「はぁぁ、なんかお前……スゲーな……」
「あれだけ魔力がないって悩んでたのが嘘みたいだね」
ネヴィルに続いてフェイが感嘆の声を上げた。
「でもこれはキーアのことがきっかけで……」
そう小さく呟いたことで皆が急に黙ってしまった。
「あ、いや、まあ完全に全ての魔力や記憶を取り戻したのはクフィアナ様に封印を解いてもらったからなんだろうけどね」
「クフィアナ様と、か。お前の過去が色々関係しているんだな」
ヤグワル団長は俺の封印が解かれたときには居合わせなかったが、なんとなくは察してくれているらしい。
結局一週間ほどは皆と一緒に訓練することになった。
剣は今まで短剣しか扱えなかった。それが今は片手剣だろうが長剣だろうが扱えるほどの筋力が付いた。それに皆驚いていたが、俺自身短剣でしか訓練したことがなかったため、やはり長剣よりは片手剣のほうが良いだろうとなった。
ノグルさんからもらった片手剣。それをそのまま使わせてもらうことにした。
手合わせでフェイたちと対戦したが、今まで力負けしていた競り合いも、ほどほどに対処出来るようになった。しかしどうしても短剣でのイメージが抜けないため、距離を取りつつの対戦になってしまう。
そのことから俺は剣よりも魔法を中心に戦ったほうが良いだろうと言われた。
「剣に魔法を帯びさせると攻撃にも使えるけど、防御にも使える」
「防御?」
フェイが実際にやって見せてくれた。
フェイは自身の持つ剣に炎の魔力を送る。剣は赤く光り出し揺らめいた。
「剣を振るってみて」
「え?」
言われるがままに剣を振り下ろした。
フェイが魔法を帯びた剣を軽く振ると、その剣に触れた途端、俺の剣は弾かれたかのように吹っ飛ばされた。
「おぉ、なんだ今の」
「魔法も撃ってみて」
「あ、あぁ」
炎の魔法を打つ。するとその剣は俺の撃った炎弾を吸収した。
「!?」
水魔法や氷弾も撃ち込んでみるが、今度はそれらを真っ二つにした。
「な、なんだこれ! すごいな!」
「炎魔法は同属性だから吸収しただけなんだけど、それ以外の魔法なら剣を弾いたのと同じだね。弾ききれない代わりに真っ二つにしてくれる。相性が悪い魔法だと剣に帯びさせた魔法の威力が弱まるけど、防御するだけなら少ない魔力で済むから弱まったらまた魔力を送ればいい」
「なるほど」
剣を戦いに上手く使うことが出来なくとも、防御に使えばいいということか。
魔法はフェイやアンニーナ、ネヴィルに戦い方を教えてもらう。実戦に近いかたちでの訓練。魔法の威力はそれなりに俺のほうが強いようだった。しかしやはり摸擬戦となると話は違う。様々な技を繰り出され、弱い魔法強い魔法織り交ぜ様々な攻撃パターン。
こ、これは……勝てない!!
やはりちょっと魔法が使えるようになったからといって、長年使いこなしている相手には勝てない。さらには竜騎士になってから皆はずっと実戦訓練をしている。そんな相手に勝てるわけがない。
「やっぱり俺は一人では戦えないな」
情けないが、いくら力を手に入れてもそれを使いこなせるほど最強になったわけでもない。俺は一人では戦えない……皆の力を借りないと……
「そんなのあったり前だろが!」
後ろからヒューイに思い切りビシッと頭をはたかれた。
「いって!」
「一人で戦えるやつなんているか!! 一対一の勝負じゃねーんだよ! もっと周りを頼れ!!」
「アハハ、だね」
ヒューイが思い切り叫んだ言葉にフェイも頷いた。アンニーナやネヴィルも笑って頷いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます