第百三十七話 相棒
「ヒューイ!! 大丈夫なのか!? 無事なのか!? 返事をしてくれ!!」
「ヒューイ!!!!」
光が収まり風で舞い上がった砂埃が周りをモヤモヤと視界を遮るが、微かに影が見える。
元々のヒューイの姿よりは圧倒的に小さな影。
次第に砂埃も収まって来ると、濃い青色が見えた。
「ヒューイ!!!!」
ヒューイの元に勢い良く駆け出した。こんなに短い距離なのに長く感じてしまう。ヒューイはどうなった!? あの青い色はヒューイの色だ! 無事なのか!? ヒューイ!!
駆け出しヒューイの魔法陣中心へとたどり着くと、そこには跪き蹲る一人の人間がいた。
濃紺の髪の毛、健康的な肌の色、蹲っていながらも均整の取れた筋肉が分かる見事な体躯。
「ヒューイ……?」
蹲っていた男はゆっくりと顔を上げた。
その顔は精悍な顔付き、切れ長の目は金色に輝き、意思の強そうな瞳で俺を見上げた。そしてゆっくり口を開くと……
「リュシュ」
「!!」
その声は紛れもなくヒューイの声だった。
「ヒューイ!!!!」
勢い良くヒューイに抱き付き、存在を確かめるように力いっぱい抱き締めた。
温かい。
生きている。
触れた身体から鼓動を感じる。
「ヒューイ!! ヒューイ!! あぁ、良かった!!!! あぁぁぁあ!!!!」
泣いた。
ヒューイが無事で良かった。
ヒューイが竜人化出来て良かった。
キーア…………
涙が止まらなかった。
喜びなのか悲しみなのか、もうそれすらも分からないほど、ただひたすら泣いてヒューイを抱き締めた。
ヒューイは小さく俺の名を呼んだが、俺が落ち着くまでそっと抱き締め返してくれていた。背中にヒューイの手の温かさを感じ、生きているということを実感していった。
ようやく俺の涙が落ち着いて来たとき、頭上からログウェルさんの声が聞こえた。
「あー、落ち着いたか? そろそろ離れたほうが良くないか?」
「え、あ、はい」
あまりに泣きまくったことが急に恥ずかしくなり、ヒューイから身体を離した。そして少し振り向き見上げると、皆が周りに集まっていた。
嬉しそうな表情でもあるのだが、なんだか皆微妙な顔で視線を逸らす。
ん? なんだ?
「とりあえず、これ」
ログウェルさんがマントのような大きな布を渡して来た。
「?」
「ヒューイに」
意味が分からず、とりあえず受け取りヒューイを見た。
抱き付いたままだったため、顔が間近にありビクッとしてしまった。竜のときもイケメンだったが、竜人になってもやっぱりイケメンだったな。
そんな呑気なことを考えていたが、ふと触れている身体に意識がいった。ん、んん!?
ヒューイの肩に手を置き身体を離していたが、その肩は温かく、肌が剥き出しだ。そしてゆっくりと視線を下の方へと移すと、胸も腹も…………
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
慌ててヒューイから飛び退き、慌てて布をヒューイに被せる。ひぃぃい!! 素っ裸じゃないか!! いや、当たり前か! いやでも、そんなこと気付く余裕なかったし!! とにかく無事な姿が嬉しくて…………素っ裸の男に男が抱き付いていた絵面…………うぐっ。
「ブッ。今頃気付いたのか」
皆が笑い出す。そ、そんなこと言われても……
「とにかく成功おめでとう!!」
皆が笑顔でそう言ってくれた。
「あ……はい、ありがとうございます」
再び涙が溢れた。
「良かった……本当に良かった……ヒューイ……」
グズグズに泣きながらヒューイを見た。
ヒューイはマントに包まりながら、フッと笑った。
「ヒューイ、ありがとう……本当にありがとう……」
ニッと笑ったヒューイは俺の頭に手を置いた。
「これからは俺がお前の相棒だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます