第三十六話 子供竜の喧嘩
なんだなんだ!? 喧嘩か!?
慌てて声のするほうへと向かう。すでに外遊びではなく部屋の中へと戻っていた子供竜たち。入り乱れて暴れまくっている。
「お、おぉ……どうしたんだ、これ」
「あ、リュシュ! ちょうどいいところに! キーアを止めてよ!」
「え? お、俺が?」
「あったりまえでしょ! キーアに慣れているのはリュシュなんだし、これからはリュシュもここの一員なんだからこれくらい止めてくれないと!」
「は、はい……」
「あー、新入りと揉めた感じだな、ハハ」
ログウェルさんは呑気に笑っている。いやいや、笑ってないでどうしたら良いか教えてくれよ!
「まあとりあえず自分で考えてみな。子供たちくらい大人しくさせられないなら、大人たちはもっと大変だぞ」
えぇぇ、いきなり無茶ぶり!! そもそも俺はキーア以外、そんなに竜と触れ合ったことないし!
うーん、どうしよう。
「おーい、お前ら大人しくしろよ~」
やんわり言ってみた。
しかしまあ当然と言っちゃ当然だけど、全く大人しくならないな。
「キーア! どうしたんだ?」
とりあえず暴れ回るキーアを呼んだ。しかしキーアも興奮しているからか、全く耳に入っていない。それどころか……。
「「あっ」」
ドカッ! バシッ! グフッ!
思い切り乱闘に巻き込まれた。
噛み付いたり、鋭い爪で引っ掻いたり、小さいが炎を噴き出したり、まあ大暴れ。それに巻き込まれ、後ろから激突される、脳天から激突される、翼でバシバシと身体を叩かれる、炎で焼かれそうになる…………ブチッ。
「いい加減にしやがれぇぇぇぇええええ!!」
怒りに任せ、子供竜たちの尻尾を引っ掴み、思い切り振り回した。もちろんキーアも一緒に。
子供竜たちを振り回している勢いで自分も一緒に回ってしまい、段々目が回って来た。そのまま子供竜と一緒にこんもりと草のようなものが山積みにされた場所へと吹っ飛んだ。
「おぇぇぇえ、き、キモチワルイ……」
完全に目が回り、天井が回って見える。子供竜たちも一緒になって倒れ込んでいる。
「「ブフッ、アッハッハッハ!!」」
ログウェルさんとルーサが爆笑した。
「ひぃぃ、あー、おっかしいぃ!! リュシュ、なにやってんの!! 面白すぎる!!」
「アハハハハ! 本当にな! こんなやつ初めて見た!」
腹を抱えて笑う二人……、いや、笑ってないでさ、なんとかしてよ。めちゃくちゃ気持ち悪い……。
『今の面白かったー!! リュシュまたやって!!』
「はぁ!? 二度とやるか!!」
こっちは気持ち悪いだけじゃ!
『俺も面白かった!!』
『俺も俺も!!』
他の子供竜たちまで『俺も』『私も』『僕も』とか言い出した。おい。お前ら喧嘩はどうした!!
『もう一回やって! やって!!』
へたり込んでいた俺の上にドカッドカッと子供竜たちが群がってくる。キーアも負けじと上に乗る。ちょっとした小山に……おい!!
「うぉぉおい!! 鬱陶しいわ!!」
小山から飛び出すように両腕を思い切り振り上げ、子供竜たちをまき散らした。その勢いで子供竜たちはころりんと転がり落ちる。
転がり落ちたことにきょとんとしていた子供竜たちはキャッキャと笑い出し、『もう一回!』と叫ぶ。
いやちょっとキリないわ!!
「ハハ、やっぱりリュシュは育成課にピッタリだな! 早速竜たちに気に入られてるじゃないか」
ログウェルさんがいまだに笑いながら言う。
「ほんとほんと、リュシュ最高!」
ルーサなんか涙目だし。涙を拭いながら腹抱えてるし。くっそー、なんか褒められてる気がしないのはなんでだ!
すっかりそのまま仲良くなったキーアと子供竜たちは再び遊び出した。たまに群がられるが下手に暴れると余計に喜んでしまい疲れるということが分かったので、無駄に騒がない。
ずっしりと頭の上やら肩にしがみつかれたまま、ログウェルさんに明日の確認をする。
その間もログウェルさんとルーサはずっと笑いを噛み殺して……いや、噛み殺せてない。
俺が寮に入ることをキーアに説明し、キーアはそのままこの演習場での生活を開始することになった。
ログウェルさんとルーサに挨拶をし、ぐったりしながら演習場をあとにすると、ちょうど説明が終わったらしい、アンニーナが女子寮から出て来たのが見えた。
「アンニーナ! 今終わりか?」
「あ、リュシュ、うん、フェイは?」
アンニーナのもとに駆け寄り並んで歩く。
「フェイは先に終わって帰ったよ」
「そっか、リュシュも明日から寮生活よね?」
「うん、めちゃくちゃ嬉しいよ」
「ちょっと時間もあるし、ロナス商会を覗いて行かない? どんな感じなのか見ておきたくて」
「あぁ、良いね、俺も見たいと思ってたんだ」
アンニーナとともに城にあるというロナス商会を訪れることにした。
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